
精錬の9割握る中国
高市早苗新政権が誕生して以降、日中関係がギクシャクしている。高市首相の台湾有事発言をきっかけに、中国の薛剣(せつけん)駐大阪総領事のSNS投稿が物議を醸し、国内ではそれに抗議する声が相次ぐ。
一方、中国政府は高市首相の発言が同国の核心的利益に触れると、まずもって取ってきた報復策が訪日観光客の渡航自粛の呼び掛け。さらに第2弾として日本産水産物の再輸入禁止など、立て続けに対抗措置を打ち出した。中国の対日強硬策は今に始まったことではないが、こうした事件が繰り返されるたびに、わが国としては冷静に共産中国の実態を捉え、対中国政策を練り上げていかなければならないことを再確認するのである。
そうした中で、週刊東洋経済(11月15日号)が、中国が世界シェアを握るレアアースに焦点を当てて特集を組んだ。「レアアースショック」との見出しがついた特集では、最初に「『武器』化されたレアアースに産業界は耐えられるか」と疑問を投げ掛ける。
そもそも中国がなぜレアアースで世界シェアを握ることができたのか。もちろん、各種レアアースの埋蔵量が他国に比べ群を抜いて多く、世界のそれの約半分を占めるといわれることもあるが、何よりも重要なことは採鉱後の精錬において、その生産量の9割を握っていることがその背景にある。
今のところ、今回の日中間の騒動において中国側は、訪日観光客の渡航自粛や日本産水産物の輸入禁止にとどまっているが、近い将来レアアースについても日本への輸出禁止に踏み切ってくることは十分に考えられる。
レアアースに関しては、先に米国と中国が繰り広げた関税合戦において10月30日、トランプ米大統領は習近平中国国家主席との会談で、中国側がレアアースの輸出規制を「全世界的に撤廃することで合意した」と発表している。といってもそれは中国のこと。条約や合意事項はいとも簡単に破棄する国であることを念頭に置かねばならない。
必須の国産開発推進
東洋経済同号には帝京大学冲水総合研究所の郭四志特任教授が、1992年の南巡講話での鄧小平の言葉を引用し、「『中東には石油があり、中国にはレアアースがある。中国のレアアース資源が世界の既知埋蔵量の80%以上を占め、その戦略的地位は中東の石油に匹敵する』という言葉は中国のレアアース産業の事業を導く指針になっている」と指摘する。事実、中国は世界中からレアアースの精錬技術と工場を誘致し、世界9割のシェアを有することに成功、それを武器に外交交渉を展開しているのである。
こうした状況下で日本の取るべき策はいかなるものがあるかといえば、一つにはレアアースの代替資源あるいは代替部品の開発であることは間違いない。東洋経済はレアメタル・レアアースの使用量ゼロあるいは削減に取り組む企業を紹介する。
例えば、レアアースの中でも中国に偏在する重希土類を使用しない方法で自動車部品などに必要な磁石を開発した大手特殊鋼メーカー大同特殊鋼を紹介している。同社は2009年に重希土類に頼らない部品の製造チームを発足させ、10年のレアアースショックを切り抜けたという。
もう一つの対応策は、高市政権下でも提唱されている国産レアアース開発の推進。わが国の排他的経済水域(EEZ)内にある日本最東端の南鳥島(東京都)には世界3位の埋蔵量約1600万㌧のレアアースが眠っているという。とりわけ、中国依存度の高い重希土類が多く含まれる。商用化に向けてコストや環境的な側面からの課題はあるものの、「レアアースの中国依存度を下げる切り札になりうる」と同誌も訴える。
経済安保の確立急務
共産中国が自由主義という西側諸国と同じ価値観を有しない国であり、なおかつ世界の覇権を狙って恫喝(どうかつ)外交・拡張路線を繰り広げることを考えれば、資源を含めた国家経済安全保障の確立は急務と言わざるを得ない。
(湯朝 肇)






