10月31日付本紙「宇宙輸送の新たな挑戦開始」、11月2日付読売「宇宙での国際協力支える柱に」、朝日「技術を将来につなげて」、4日付日経「新宇宙船は国益見据え活用を」――。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が10月下旬にH3ロケット7号機で、国際宇宙ステーション(ISS)に物資などを届ける新型の無人補給機(HTV-X)の打ち上げに成功したことを受け、掲載4紙が掲げた社説見出しだ(毎日、産経、東京はなし)。

掲載が早かった本紙は、見出しの通り、「宇宙輸送の新たな挑戦」の始まりに温かいエールを送った。HTV-Xは単なる補給機にとどまらず、物資輸送後に軌道上で技術実証プラットフォームとして活用、またISS退役後の地球低軌道での有人活動や米国主導の月探査「アルテミス計画」など国際宇宙探査ミッションへの応用が可能だからだ。
今回、HTV-Xには日本製の二酸化炭素の除去装置を積み込み、宇宙で性能を検証する。二酸化炭素除去や水の再生利用は生命維持に必須の技術。読売は「宇宙で有人活動の場が広がる時代の到来に備え、日本はこうした技術の確立に努めるべきだ」と説く。
輸送能力は1・5倍
輸送能力をこれまでの補給機「こうのとり」の1・5倍の6㌧に強化し、冷凍・冷蔵が必要な食品や研究試料も運べるようになったことには、読売は「安定した運用で、ISSを支える中心的な役割を果たしてもらいたい」と、本紙同様エールを送った。同感だ。
同紙は今回、ISS離脱後に数カ月間、人工衛星のように軌道上にとどまり、さまざまな試験を行うことに「機体を無駄なく活用する設計は評価できる」と指摘。特にHTV-Xの軌道上の姿勢を地上からレーザーで測定する試験については、宇宙空間に漂う多数の宇宙ゴミの状況を正確に把握し、除去する技術の開発につながるもので、「意義が大きい」と評価した。
朝日は、HTV-Xが計5機打ち上げられる予定であることを挙げ、「まずは輸送の任務を確実にこなし、信頼を高めたい」とした。
また、物資輸送後に最長1年半、実験や技術実証を行うプラットフォームとして活用することに、JAXAのプロジェクトマネージャが「二刀流」と呼ぶ、日本ならではのユニークな発想と言えそうだ、と評価した。
ただ、実験棟「きぼう」での創薬や新素材の研究開発などで利用が拡大しているとはいえ、費用や利便性に関して「使い勝手がよくない」といった声もあるとして、「コストを意識しつつ利便性を高め、利用の裾野を広げていくという視点が重要だ」とした。
別な視点で注文を付けたのは日経だ。打ち上げに使った国産大型ロケットH3とあわせ、「日本の宇宙輸送能力を世界に示した」「日本が物資輸送を通じて(ISS)参加国としての責務を果たす意義は大きい」と評価するものの、老朽化が進むISSが2030年に退役の予定になっていることから、「新しい宇宙船と大型ロケットをISS閉鎖後に持て余すのでは困る」と指摘。「将来を見据えた戦略を官民で練り、その意義を国民にわかりやすく説明すべきだ」と「国益に資する活用」を説く。
自立した宇宙戦略を
確かに尤(もっと)もで、「アルテミス計画」についても、次のように指摘する。日本は同計画で宇宙輸送の一翼を担う予定だが、日経は「トランプ政権が誕生した米国は政策に一貫性を欠く。日本は、米国の意向に沿うだけでは不確実性に翻弄される」として、「日米の協力関係を深めつつ、自立した宇宙開発戦略を打ち出す必要がある」というわけだ。
H3についても、30年代前半までに年30回程度の打ち上げを目指すが、米国は昨年だけで153回と最多で、その約9割を民間のスペースXが占める。その差は歴然で、前途は容易でない。
同紙は「今回の大型ロケットを軸に自国の産業基盤の構築を急がなければならない」とした。確かにその通りで、浮かれてばかりはいられないが、まずは新たな挑戦と着実な成果の積み上げを期待したい。
(床井明男)





