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アフリカに進出する中国、アンゴラでの反中暴動を伝える米軍誌

燃料価格高騰に怒り

 巨大経済圏構想「一帯一路」の旗の下、世界に経済覇権を拡大する中国。アフリカもその標的の一つだ。製品の主要輸出先であるばかりか、投資先、天然資源の調達先でもある。

 アフリカ専門のコンサルティング企業「アフリカ・ビジネス・パートナーズ」によると、中国は、「アフリカへの融資国としては新参者」だが、「資源価格が高騰していた2006年ごろから融資額が伸び始め」たという。経済的発展を前に、アフリカの地下に眠る膨大な資源の獲得にアフリカはうってつけだったのだろう。

 中でも進出が著しいのはアフリカ南部大西洋岸のアンゴラだ。近年は中国の景気低迷もあり減少傾向にあるものの、最大の融資先でもある。

石油資源の豊富なアフリカ国家への資金集めのため、中国の胡錦濤国家主席に出迎えられ中国に到着したアンゴラのジョゼ・エドゥアルド・ドス・サントス大統領(右)(2008年12月17日/UPI)
石油資源の豊富なアフリカ国家への資金集めのため、中国の胡錦濤国家主席に出迎えられ中国に到着したアンゴラのジョゼ・エドゥアルド・ドス・サントス大統領(右)(2008年12月17日/UPI)

 そのアンゴラで大規模な反中暴動が発生したことは、日本国内ではあまり報じられていない。

 中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると、燃料価格の高騰に怒った住民らが7月末から8月にかけて暴動を起こし、治安部隊との衝突で22人が死亡した。「ここ数十年で最大の暴動」であり、「アフリカ第3位の石油産出国でありながら、国民の大部分はその恩恵を受けていない」という。

 米アフリカ軍が発行する季刊誌「アフリカ・ディフェンス・フォーラム(adf)」によると、暴動の直接の原因は補助金の削減で燃料価格が高騰したこと。暴動の中で中国人コミュニティーが標的となった。店舗、工場などが襲撃され、中国系住民数千人が国外への避難を余儀なくされたという。

 アンゴラの中国系住民は約30万人で、アフリカ最多。adfは、「中国人は工場、鉱山を保有し、建設業や小売業でも重要な役割を果たしている。7月末の暴動で首都ルアンダの100ほどの店が襲撃された」としている。

 暴動に先立ち、暗号資産(仮想通貨)の取引をコンピューターで検証・承認する計算作業「マイニング(採掘)」を国内で行っていた中国人60人が国外退去処分を受けていたという。同国では、電力網への負担から、大量の電力を消費するマイニングは禁止されている。

違法操業や河川汚染

 暴動の発生は、中国人に対する日ごろの不満も一因だったのだろう。現地住民は中国人に搾取されているという感情が根強い。

 2024年には違法操業を理由に中国系の2工場が閉鎖された。金属処理工場を無免許で開業、その上、廃水で川を汚染していた。プラスチック工場では、100人以上の地元住民が閉じ込められ、不衛生な環境で働かされていたという。魚類を根こそぎ持っていく中国のトロール船にも地元の漁民から不満の声が上がっていたという。

 中国への反発はアンゴラにとどまらない。

 カナダ紙グローブ・アンド・メールによると、タンザニアでは政府が、中国人商店から圧迫を受ける小売業保護のため、「中小企業を含む15の経済部門から外国人を禁止する」措置を取った。大量に仕入れ、安価で売りさばく中国人商店に地元住民が太刀打ちできず、悲鳴を上げていたという。

 グローブ・アンド・メールは「アフリカ大陸全体で拡大している中国への反発の一部だ」と指摘。「市場や店舗で中国人貿易業者の存在が拡大していることに憤慨するアフリカ人が増えており、抗議行動、逮捕、政府による規制、SNSでの怒りの高まりを引き起こしている」と指摘している。

小さい現地への恩恵

 建設業も盛んだ。「中国の建設会社はアフリカ大陸中に高速道路、港、鉄道、サッカースタジアム、大統領官邸、政府機関を建設してきた」が、中国は大量の中国人を送り込み、現地の現場で工事に当たらせるため、現地の経済への恩恵はそれほど大きくない。

 ジンバブエとザンビアでは「河川の汚染や山腹の破壊などの環境災害」を引き起こし、ガーナでは「森林伐採や土壌劣化、河川汚染」で数十人の中国人移民が逮捕されたという。

 中国製ソーラーパネル設置による森林破壊、違法な開発など日本でも問題が指摘されている。アフリカの問題は日本でも人ごとではない。

(本田隆文)

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