トップオピニオンメディアウォッチ公明の連立離脱 高市自民総裁誕生直後に 背景に池田名誉会長の死去 【政党メディアウォッチ】

公明の連立離脱 高市自民総裁誕生直後に 背景に池田名誉会長の死去 【政党メディアウォッチ】

論説解説室長 宮田陽一郎

 自民党の高市早苗総裁が21日、第104代首相に就任した。日本初の女性首相である。これによって、日本維新の会が「閣外協力」する高市連立内閣が発足した。高市氏は28日、来日したトランプ米大統領と会談し、「同盟の新たな黄金時代を共につくり上げたい」と訴えた。

 一方、これまで自民と26年にわたって連立を組んできた公明党が、高市氏の自民総裁就任直後に連立を離脱した。公明の斉藤鉄夫代表は10日、高市氏との会談で企業・団体献金の規制強化を求めたが、高市氏の同意を得られなかったことで、自民とたもとを分かつこととなった。

 公明の機関紙「公明新聞」は翌11日付1面で連立離脱を報じた。掲載された「記者会見での質疑(要旨)」によると、斉藤氏は「政治への信頼回復という課題を、どう自公で乗り越えていくかということで自民党に提案させていただいたが、明確な答えがなかったということで大変、残念だ」と述べた。

 自民、公明の連立政権は1999年に始まった。連立合意に先立つ90年代半ば、自民は公明が参画した新進党の台頭を懸念し、政教分離を持ち出して公明の支持母体・創価学会への攻撃を強めていた。

 公明が絶対に阻止したかったのは、学会の池田大作名誉会長の国会招致だ。新進を切り崩したい自民と反学会キャンペーンを終わらせたい公明の思惑が連立の背景にあった。以降、国政選挙の際には、自民が一部の選挙区を譲り、支持者に「比例は公明」と呼び掛ける代わりに、公明は全国の選挙区で自民候補を支援する態勢が定着した。

 しかし安全保障を巡っては、自民が現実的な政策を志向するのに対し、「平和の党」を旗印とする公明は、安倍政権下で2014年に閣議決定された防衛装備移転三原則や、15年に成立した安全保障関連法などにさまざまな制約を課した。もっとも公明の方も、こうした防衛政策に関与することで「平和の党」のイメージが低下したことは否めない。

 憲法改正に関して自民は18年に改憲4項目をまとめたが、この中の「9条への自衛隊明記」に関しては、戦力不保持と交戦権否認を定めた9条2項を残したままでは混乱を招くとの見方もある。自民が2項を削除した上での自衛隊明記としなかったのは、現行憲法を維持し、必要な規定を付け加える公明の「加憲」に配慮したからだとされる。改憲を党是とする自民に対し、公明は慎重だったと言えよう。

 公明としては、自民の「政治とカネ」の問題の影響を受け、昨年の衆院選、今年の東京都議選、参院選で3連敗したことで、連立にメリットを見いだせなくなった。高市氏の保守路線への反発もあるに違いない。

 ただ離脱の背景には、23年に池田氏が死去したことがある。学会の中で不満がくすぶりながらも自民との連立を維持してきたのは、池田氏を守るためだったと言っていい。だが今はもう、その必要がなくなった。

 「公明新聞」26日付1面トップは「臨時国会 野党・公明どう臨む」という見出しで、西田実仁幹事長へのインタビュー記事を掲載した。西田氏は「四半世紀近くにわたり、与党で積み重ねてきた知識・経験も踏まえた上で、どこまでも『国民のため』の視点で、是々非々で政権の施策を監視し、対峙していく決意です」と述べている。

 学会員の高齢化による集票力の低下など、連立離脱後の公明を取り巻く環境は厳しいものがある。学会員以外に支持を広げるには「国民のため」「是々非々」を貫けるかどうかが鍵となるだろう。

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