
低い個人消費の割合
中国共産党の重要会議、第20期中央委員会第4回総会(4中総会)がコミュニケを採択し閉幕した。
産経は25日付主張で「コミュニケは『強大な国内市場を整備』して『内需拡大を堅持』し『消費の押し上げに力を入れる』と強調した。だが、具体的な施策には踏み込めなかった」と批判した。
日経は26日付社説で「習近平指導部は日本が経験した深刻なデフレを避けるためにも、消費を底上げする抜本策に踏み込むべきだ。不動産問題の先送りももはや許されない」と踏み込んだ。
不動産バブルの崩壊で中国経済は低迷を余儀なくされ、米中関税戦争がこれに追い打ちを掛ける中、4中総会は個人消費を柱とした内需拡大を打ち出した。だが、あくまでスローガンとしてだけでその本気度が伝わらない苛立(いらだ)ちを産経も日経も糾弾した格好だ。
そもそも中国の個人消費は国内総生産(GDP)の4割でしかない。日本や欧米諸国のような6割に届かないのは、伝統的な貯蓄性向の強さだ。背景にあるのは将来への不安であり、本気で個人消費を伸ばそうというなら雇用の安定と社会保障にまで踏み込まないと難しい。また、不動産バブルの破裂がもたらしている地方財政の破局も座視できない状況にある。
輸出増で国際的反発
なお朝日は25日付社説で内需問題がもたらしている国際問題にスポットを当て「内需の弱さは過剰生産と輸出増加の一因となっている。トランプ政権の高関税政策で対米輸出が滞る分、他国に振り向けた輸出が大きく伸びているものの、東南アジアなどで中国製品の流入を警戒する声が上がっている」とし「これでは中国自身にとって必ずしも対外関係の安定と強化につながらない」と結んだ。コミュニケには米国が内向きとなるのを好機と捉え、「35年までに国際影響力を大幅に引き上げる」と謳(うた)っているが、それに逆行する過剰生産と輸出増加で国際的反発を招く矛盾を皮肉っている。
その上で朝日は「国際的影響力を気にする前に、まずは自国民の暮らしを考えるのが先決だろう」と結んだ。ただ政治の常道こそ「内を治めて外に当たる」だが、中国をはじめとした強権国家には「外に当たり内を治める」政治手法が存在する。いわゆる外に戦火を求めてナショナリズムを焚(た)きつけ政治的求心力を得ることで内政問題を片付けるという冒険主義の存在だ。
さらに読売は25日付社説で「中国は、政治的に対立する国との貿易を制限して圧力をかける『経済的威圧』を繰り返している。東・南シナ海では一方的な海洋進出を続け、日本など周辺国への深刻な脅威となっている」とし「法の支配や自由貿易とはかけ離れたこうした行動を改めない限り、各国からの信頼に基づいた影響力は築けるはずがない」と中華思想に基づく独善的姿勢では国際的信任は得られないと批判する。
対中宥和から転換を
台湾問題に関し産経は「『祖国統一という偉業を推し進める』として、台湾併呑(へいどん)にも改めて意欲を示した点も看過できない」と抗議した。
国慶節10月1日の習氏の演説で「台湾独立反対」は言ったが、「統一の文字」はなかっただけに国家目標としての「台湾併合」路線を確認した産経は「宥和(ゆうわ)姿勢を示すだけに終わった石破茂前首相の轍(てつ)を踏んではならない」と永田町へ警鐘を鳴らす。その上で「習政権の暴走を防ぐため巧みな外交と抑止力向上を進めてもらいたい」と総括した。
わが国が教訓とすべきは、第2次世界大戦前の英首相チェンバレンの宥和政策が、ヒトラーを増長させ侵略を招いたという歴史的事実だ。その意味では対中宥和に傾斜していった石破茂前首相のくびきから早々に離脱し、内外問わない習政権の強権統治を食い止める安全保障策を確立する必要がある。
(池永達夫)





