トップオピニオンメディアウォッチプラザ合意40年で改めて経済構造転換の難しさを明かした各紙社説

プラザ合意40年で改めて経済構造転換の難しさを明かした各紙社説

ドル安へ各国が協調

 9月22日付読売「為替の影響受けぬ強い経済に」、毎日「世界経済安定へ教訓今も」、日経「重みを増すプラザ合意40年の教訓」――。

 日米英仏と旧西ドイツの先進5カ国(G5)が協調して、ドル高是正に動いた「プラザ合意」から22日で40年を迎えたことを受け、論評を掲げた各紙の社説見出しである。掲載はこれまでに3紙のみ。

 プラザ合意は、財政と貿易の「双子の赤字」を背景に米議会で高まる保護主義を何とか鎮めようと、米国の求めに応じて各国が協調して為替介入を実施。ドル安誘導で米国の輸出拡大を促す一方、貿易黒字国の日本と西独に内需の拡大を求める試みだった。

 さて3紙の論評だが、読売は日本の教訓に絞り、見出しの通り、「強い経済体質を作っていかなければならない」と強調する。

 もっとも、これはプラザ合意に限らない。海外の景気に影響され、そのたびに指摘される内容で、今回も同紙は「為替変動に耐えうる日本経済とするには、国内への投資を進め、賃金も物価も上がる内需主導型へと転換していく必要がある」と説く。

円建て決済を増やす

 ただ米国との関係で、同紙は日本の貿易決済はドル建てが多く、円建ての輸出は4割弱にとどまるとして、「米国への依存度を下げ、アジアとの関係を深める中で円建て決済を増やせば、輸出の為替リスクを低減できるだろう」と指摘する。一つの提案として評価したい。

 毎日は、トランプ米政権の高関税政策などで、戦後の世界経済を支えてきた自由貿易やドル基軸体制が揺らぐ中、「教訓をくみ取りたい」という。

 同紙は、プラザ合意後も、赤字を膨らませていた米国の過剰消費は続き、貿易黒字国の日本と西独は輸出依存から内需主導の経済成長への転換を約束したが、「為替調整という対症療法だけで世界経済のゆがみを正すのは難しかった」と説く。

 特に米国に対しては、双子の赤字を抱えたままで、貿易赤字削減を掲げるトランプ政権は、各国に一方的な高関税を課したが、「構造問題を棚上げしていては二の舞いとなる」と強調する。

 結局は、各国が構造問題の解決を含めた「協調体制の立て直しが急がれる」が、同紙のいう教訓で尤(もっと)もなのだが、具体論に欠ける。

 日経は経済紙とあって、この経済史に残る大きな出来事を、通常2本建ての社説枠に1本だけの大社説で取り上げた。同紙が日本にとって「最大の教訓」として挙げるのは、「円高対応にとらわれ、為替調整の先にあるべき経済構造の転換への道筋を持たなかったことにある」だ。

米の暴走どう止める

 プラザ合意直後の1986年に首相の諮問機関が出した「前川リポート」は内需主導の経済構造への転換を訴えたが、実際には「公共事業の景気刺激と臨海部や地方のリゾート開発にすり替わり、金融緩和であふれたマネーは株や土地への投機に向かった」と同紙。そのバブルがはじけると金融システムが揺らぎ、長期の経済停滞の落とし穴にはまったというわけだ。

 「失われた30年」を経て、最近は資源高、人手不足が物価を押し上げ、賃金上昇の圧力になっているが、同紙は「人口減を補って国をどう開き、世界を舞台に何で稼ぐか」「経済構造の転換という40年前からの『宿題』に立ち返り、官民が大胆に解いていく試みが求められる」と強調する。

 さすがに他紙より詳しく、説得力もあるが、この「宿題」は人口減といった環境条件などからも、常に続けざるを得ない努力目標と言えまいか。

 日経は最後に、米国の不均衡是正に向けた「暴走」を止めるため、「国際協調路線にどう立ち戻らせるか。日本は自らの成長力を取り戻し、世界経済の安定へ重要な役割を果たしたい」と結んだ。回り道のようだが、それしかないのだろう。(床井明男)

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »