侵略容認する3首脳
中国共産党政権は9月3日、北京の天安門広場で抗日戦勝80年の記念式典と軍事パレードを開催した。
軍事パレードでは米本土を射程に収める新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「巨浪(JL)3」や大陸間弾道ミサイル(ICBM)「東風(DF)61」が初公開され、迎撃が困難とされる極超音速ミサイルなど強大な軍事力を見せつけた。読売の4日付社説は、これを「中国と対立する台湾の頼清徳政権を威嚇すると同時に、台湾有事の際に米国に介入を躊躇(ちゅうちょ)させる抑止効果を狙っているのは明らかだ」と読み込んだ。
なお習近平国家主席は式典で「世界一流の軍隊建設を加速し、国家の主権と統一、領土の一体性を断固として守る」と演説した。
日経の4日付社説は天安門の楼上に中国の習氏、ロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩総書記の3人が並び立ったことを問題視し「侵略を容認する世界の脅威を象徴する光景である」と前置きした上で、「ロシアはウクライナに攻め込み、領土を奪おうとしている侵略国だ。北朝鮮はそこに派兵し、ロシアを軍事的に支援している。他国を侵略している側の首脳たちを前に、習氏が『領土の一体性を守る』と訴えても筋が通らない」と糾弾した。
戦ったのは国民党軍
また産経の4日付主張は、「いずれも反日的で核武装した国の独裁者で力による現状変更を狙っている。国際平和を乱す今回の軍事パレードは容認できない」と総括した。
さらに同主張は、「習氏は演説で『戦勝国』の立場をアピールした。だが『共産党が日本の侵略と戦い勝利を収めた』という共産党政権の常套(じょうとう)句は史実ではなく虚構にすぎない。日本が大陸で主敵としたのは中華民国(重慶政権)の国民党軍だった。中国共産党の主力は奥地の延安に引きこもり、漁夫の利を狙っていた。そもそも共産党の中華人民共和国建国は戦後の1949年である」と虚構のプロパガンダを喝破してみせた。
その上で「今回の軍事パレードは、中国経済低迷の中、支配の正統性を強調したい共産党による、共産党のための、欺瞞(ぎまん)に満ちた『戦勝』記念行事である」と歴史をゆがめた砂上の楼閣性を批判した。
1937年から45年まで日本軍と戦ったのは蒋介石率いる中国国民党軍で、総計350万人の死傷者を出したが、共産党軍は延安に力を温存したまま日本軍とはほとんど戦っていない。毛沢東の戦略は、国民党軍を日本軍と戦わせることで政敵の力をそぎ落とし、その上で内戦に勝利するというものだった。
「暴力はそれ自体だけでは生きていけない。常に嘘(うそ)と結び付いている。嘘だけが暴力を隠すことができ、暴力だけが嘘をつき通すことを可能にする」
この「嘘と暴力の共犯関係」を指摘したのは、旧ソ連の反体制作家だったソルジェニーツィン氏だ。
独裁国家は体制に都合のよい偽情報で国民の目をくらまして暴力の隠蔽(いんぺい)を図り、力で他国や国民をねじ伏せる。
産経の主張は、そうした独裁国家の性(さが)「嘘と暴力」に肉薄した社説になった。
鍵握るインドの選択
中国は今回、欧米が主導してきた大戦後の世界秩序に不満を持つ国を糾合し、新国際秩序形成への野心を露呈させた。この野心が実を結ぶことになるかどうか、インドの選択に懸かっている側面がある。
ロシア産原油購入の制裁としてトランプ米政権から50%の関税を課せられたインドは、天津市で開催された上海協力機構(SCO)首脳会議には参加したものの、軍事パレードには参加していない。
読売の同社説は「インド太平洋地域の安定には、日米豪印4か国の『クアッド』や、日米韓などの連携が欠かせない」と強調した。さらに産経の同主張は「台湾有事などで中露朝が連携すれば日本にとって未曽有の脅威となる」とし「国際社会は自由と民主主義の価値を掲げて結束したい」と結ぶ。
(池永達夫)






