最後のフロンティア
第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が、横浜市で始まっている。
アフリカは豊富な資源を抱えるほか、2050年には人口約25億人に達し、世界の4人に1人がアフリカ人になると予想される。何より人口ピラミッドにおいて若年層が厚く、巨大市場と合わせ「最後のフロンティア」とされる。わが国がそうしたアフリカとの関係強化に動くことの意義は大きいと、各紙は共通して強調する。
ただ、その筆致はかなり異なる。
TICAD9をテーマに社説を書いたのは、朝日と日経、それに産経だ。
朝日の19日付社説「アフリカ開発 日本の強み生かすとき」は、中露や欧米が「権益の足場づくりや、鉱物資源などの確保を優先する思惑が見え隠れするのが気がかりだ」と前置きした。
その上で「特に米トランプ政権は露骨だ。6月にコンゴ民主共和国とルワンダの和平を仲介した際、合意にはコンゴの希少鉱物への米国のアクセスが含まれた。海外援助を担う国際開発局を解体したことで、特にアフリカで深刻なエイズやマラリアなど感染症対策への影響が懸念される。一方で、高率の関税を課して輸出産業に打撃を与えている」とトランプ政権の強欲と非情を強調した。
強権体制支える中露
一方、産経は18日付主張「日本とアフリカ 共栄目指し中露に対抗を」で「中国とロシアは巨額インフラ投資や軍事力で影響力を及ぼし、一部の国にみられる強権体制を支えている」と中露に言及した。
その上で「近年懸念されるのはサハラ砂漠の南縁部に位置するサヘル地域の動向だ」とし「同地域では、フランスの旧植民地国のマリ、ニジェール、ブルキナファソで相次いでクーデターが起き、親露派の軍事政権が誕生した。軍事政権は、旧宗主国フランスや米国の駐留軍を追放した」とサヘル地域の具体的な内情を指摘する。
さらに中国に関し「巨額融資などを盾に台湾との断交をアフリカ各国に迫った。台湾と外交を維持するのは今やエスワティニだけだ」と経済的メリットを餌に台湾の外交的政治空間を狭めようという中国の野心を批判した。
同じアフリカをテーマに、朝日は米国の非を説き、産経は中露の野心を強調した。
興味深い日経の社説
興味を引いたのは、日経の17日付社説「今こそアフリカへ足がかりを」だ。「アフリカ東部はインドから距離が近く、消費者の嗜好にも共通点が多いことから、スズキはインドで生産したクルマをアフリカ各国に輸出する。ダイキン工業もインド拠点を核として、アフリカ市場を開拓する考えだ」とインド経由でのアフリカ進出を詳細に書いた。
昔、改革開放へ路線転換した中国で工場を立ち上げるのに、台湾に進出済みの日本企業が台湾人スタッフを中国に投入し、軌道に乗せるのに成功した事例が多く報告されたことがある。同じ文化圏でありマンダリン(北京語)を話せる台湾人スタッフはスムーズな工場立ち上げや運営に力を発揮したのだ。このアフリカバージョンが、アフリカ進出にインド人を活用するという手法だ。
インド南部のケララ州を訪問した時、肌の黒さとハートの繊細さにアフリカを感じたことがある。もともとインド亜大陸は8800万年前、アフリカから分離して北方へ移動したとされるから地形学的にもインドのルーツはアフリカになる。
そのインド人パワーを媒介に、アフリカに進出するというのは的を射ているのかもしれない。
いずれにしても、歴史の潮流は大西洋の時代から太平洋に移り、さらにアフリカを西岸に持つインド洋の時代を迎えようとしている。その風向きをどう読み解くのか、朝日と産経の船頭ではかなり違う。
(池永達夫)






