遺伝子意味する語に
米人気女優シドニー・スウィーニーさん(27)を起用した米カジュアルファッションブランド「アメリカンイーグル」のCMを巡って米国のメディア、SNSで大論争が起きている。
CMでは「白人、青い目、ブロンド」のスウィーニーさんが、ジーンズ姿で名車マスタングGT350と共に登場する。1960年代に登場したマスタングといえば、米国の高性能、大排気量のスポーツカーのレジェンド、米国の発展と力、古き良き米国の象徴だ。
スウィーニーさんがそのマスタングに青いジーンズで乗り込むと、キャッチコピー「シドニー・スウィーニーのジーンズは最高」というテロップが流れ、爆音を上げながら走り去る。
別のCMでは、「遺伝子(ジーンズ)は親から子へと受け継がれ、髪の色や性格、目の色などをも決定することが多くある。…私のジーンズは青」と話す。さらに別のCMでは、「シドニー・スウィーニーの遺伝子(ジーンズ)は最高」とジーンズが遺伝子を意味する「ジーンズ」に変えられている。
これにリベラルメディアがかみついた。
ニューズウィークで、キーン大学の広告専門家、ロビン・ランダ教授は、「無神経なばかりでなく、歴史的含みがある」と主張、「優れた遺伝子」という文言は、かつての優生思想の中心的考え方であり、これによって、白人の遺伝的優越性という思想が促進され、それ以外の少数派の強制不妊へとつながったと懸念を表明。
DEIに逆行と批判
英紙ガーディアンも、「白人至上主義的なメッセージ」と取ることができ「配慮が足りない」とこき下ろした。
ここからさらに近年はやりの「多様性、平等、包括性(DEI)」に「逆行」している、ウォークイズム(性別、人種などによる差別に敏感なこと)への反乱、白人優越主義、「ナチスの宣伝」などという激しい批判がリベラルメディアにあふれた。
ニュースサイト「デイリービースト」は、「ウォークの反攻」とした上で、「トランプ政権が公共、民間部門でDEIプロジェクトの解体に取り掛かっている時であり、この広告がオルタナ右翼の保守主義を支持していると感じる人もいる」と指摘。政権幹部らが「『ウォーク』の怒りの背後には『民主党』がいる」と主張していることに触れるなど、政治をも巻き込んだ議論に発展している。
一方の保守系メディアは、「過剰反応」と反論している。
保守系のFOXニュースはこの問題に強い関心を示し、リベラル派の反発を「過剰」と指摘、批判の不当性を訴えた。
バイデン政権時に盛り上がりを見せたDEIだが、政権末期には撤回する企業が出始めた。その後、反DEIを掲げるトランプ政権の誕生がきっかけになり、予算を削ったり、看板を下ろしたりする学校や企業が続出した。少数派への差別是正が本来のDEIのはずだが、いつの間にか逆差別、伝統、主流というものへの否定へと変わっていった。いずれ支持を失うのは自然な流れというべきだろう。
市場は肯定的捉え方
SNSではアメリカンイーグルへのボイコットを主張する投稿がある一方で、株価は12%も上がったという。消費者の反応はさまざまだが、少なくとも市場は肯定的に捉えているようだ。
スウィーニーさんは最近、次期ボンドガール候補として取り沙汰されるなど存在感を増している。
ホワイトハウスの広報責任者は「(自身の価値観にそぐわない主張を持つ個人や組織を排除する)キャンセルカルチャーが発狂した」とリベラル側の動揺ぶりを揶揄(やゆ)した。
トランプ政権下での米国の保守回帰にリベラル派が強い危機感を持っていることをうかがわせる一例だろう。(本田隆文)






