全選挙区に立候補者
安倍晋三元首相銃撃事件からちょうど3年経(た)つ。あの日も参院選の最中だった。その後、政治は様変わりし、再びの参院選である。「石破政権を問う」(朝日)、「石破政権 評価問う」(産経、いずれも4日付1面)。左も右も、ごく当たり前の見出しで参院選公示を報じている。
朝日のソデ見出しは「物価高対策 現金給付か減税か」とあり、産経には「現金給付vs消費税減税」と題する党首の顔写真付きイラストが掲載されている。他紙の見出しも似たり寄ったりで、1面には党首の顔写真がずらりと並ぶ。国政選挙の公示を伝える、いつもの紙面ではある。
が、その産経のイラストに違和感を抱いた。「現金給付」には自民党と公明党の両与党党首、「消費税減税」には立憲民主党、国民民主党、日本維新の会、れいわ新選組、共産党の野党党首の写真とその主張があるが、参政党の神谷宗幣代表が載っていなかったからだ。同党は公職選挙法上の政党要件を満たし、日本記者クラブ主催の党首討論会にも出席した。それに減税の主張もしている。それなのになぜか産経は載せなかった。
産経2面には「自民1人区で参政警戒 保守票分散『致命傷』恐れ」との見出しで「政権幹部は『自民の票がかなり食われる。何かしらの対応が必要だが、秘策はない』と頭を抱える」とあった。参政は1人区を含め全選挙区に候補者を擁立しているからだ。それほど注目されているのに産経は“参政消し”をした。
石破批判票はどこへ
今回の参院選の焦点は、石破批判票の受け皿の行方だろう。どの世論調査でも内閣不支持率がほぼダブルスコアで支持を上回っているからだ(毎日6月30日付=不支持61%、支持24%など)。産経の「阿比留瑠比の極言御免」(7月3日付)によれば、リベラル票は決して自民には来ないから、注目されるのは「岩盤保守層」の動向だ。石破首相に批判的でも自民にとどまるのか、それとも野党に移るのか、そこがポイントだ。
朝日と読売が早くも5日付に「参院選序盤情勢」を載せたが、「自公、過半数微妙な情勢」(朝日)、「自公、過半数微妙」(読売)といずれも与党劣勢を伝える。読売は「立民・国民堅調」、朝日は「国民民主・参政に勢い」とし、「立憲微増 自民不満の受け皿なりきれず」と分析している。
朝日によれば、全体の勝敗を左右する改選数1の「1人区」(全国32)で、自民がリードしているのは12選挙区にとどまり、9選挙区で野党系候補にリードを許している。複数区では「参政は東京では一歩リードし、埼玉、神奈川、愛知、大阪、北海道、千葉、兵庫で混戦模様、福岡でも激しく追う」と参政の驚くべき躍進を予測し、「(自民の議席減少分は)野党第1党の立憲ではなく、国民民主と参政に移る形になっている」とする。
読売ネット版にある地方面(沖縄を除く)の各地情勢も参政が支持率を高め、立民を上回っている県もある。大阪では維新が26%と断トツだが、これに自民10%、参政9%、国民民主8%、公明5%が続き、立民・れいわ・共産・保守は4%にとどまっている。
むろん、下馬評が覆る可能性はある。オールドメディアを疑問視するSNS重視派が増え、米大統領選では「隠れトランプ票」を無視したメディアの歴史的誤報もあった。発言一つでネット炎上する例もある。参政潰(つぶ)しの情報戦が演じられるかもしれない。
比例では2位急浮上
さて、産経である。5日付1面に「外国人受け入れ」について各党の政策を載せたが、見出しは「自維国は慎重 立共は拡大」と、ここでも参政抜きだ。参政は「日本人ファースト」を掲げ外国人受け入れに他党よりも強く慎重論を訴えているのに、である。産経ネットに掲載された共同通信の最新(5~6日)世論調査は「参院選比例投票先、参政8%で2位急浮上 国民と立民6%抜く 自民18%」とある。それでも産経は参政抜きか。どう考えても解せない。(増 記代司)





