トップオピニオンメディアウォッチNHK報道の偏りへの不信の声と報道側の戸惑い伝えた「国際報道」

NHK報道の偏りへの不信の声と報道側の戸惑い伝えた「国際報道」

視聴者から厳しい声

3日公示の参院選挙(20日投開票)は、国政党の勢力図に、SNSがどのような変化をもたらすのだろうか。テレビ、新聞などの既存メディアに不信感を持つ若者層は、情報取得の手段としてユーチューブやX(旧ツイッター)に依存する度合いを強めている。

既存メディアの報道の偏りは、昨年11月に行われた兵庫県知事選挙で、メディアからの批判にさらされた上、議会の不信任によって失職した斎藤元彦氏が大方の予想を裏切って再選を果たしたことで大問題となった。テレビ、新聞が報道しない内容をSNSで拡散し有権者の投票行動を変えたのだ。国政選挙でもSNSの影響力は無視できない。既存メディアの対応が注目される。

メディア不信は世界的な問題で、海外ニュースの偏向についても批判されている。トランプ政権によるDEI(多様性、公平性、包括性)政策見直しのように、価値観が分かれるテーマでその傾向が強い。

NHKBS「国際報道2025」(月曜から金曜日午後10時放送、翌早朝総合テレビで再放送)は6月27日、視聴者の声に答えるコーナーで、NHKに向けられた批判の声に向き合い、公平な報道に苦心する姿勢を示した。それがどれほど徹底されているかは疑問だが、TBS「報道特集」のように報じる側の正義感を押し付ける姿勢を改めようとしないテレビよりは好感が持てた。

番組には次のような厳しい声が寄せられた。「根拠ある情報であっても都合よく切り取って報道する既存メディアも存在する。NHKには日本のための偏らない報道をしてほしい」「日本のテレビ報道がひどいと感じます。報道する側は事実のみを公平に伝えてほしい」

「朝起きて新聞に目を通しテレビをつける。そんな当たり前の日常が当たり前でなくなる日はすでに今訪れているでしょう」と悲観する声もあった。すべて50歳以上の視聴者の声だ。テレビに対する不満が広がるのは、若者の間だけでないことが分かる。

不信は世界的な傾向

これに対して、キャスターの辻浩平は「ずっとこうした声に向き合っていかないといけないと思っていた」と吐露した。視聴者の意見が分かれるテーマが多くなった中で、公正に報道することの難しさを感じているという。

番組は、メディアに対する不信は世界的傾向であることを示す調査結果も紹介した。英国のロイター・ジャーナリズム研究所が今年、48カ国・地域、10万人を対象に行った調査だ。

それによると、「ニュースは信頼できる」と回答した割合が最も高かったのはフィンランドで67%、次いで南アフリカ55%だった。あとはすべて50%以下。日本39%、韓国31%、アメリカ30%などだった。日本では15年調査の46%から、7ポイント下がっている。

日本では10年前、ニュースの情報源として、テレビを挙げた割合は73%、新聞・雑誌46%、SNS21%だった。今年、テレビは62%に下がり、新聞・雑誌は19%まで落ち込んでいる。新聞の発行部数は過去10年で半減しているのだから、当然とも言える。SNSだけはわずかだが24%に上がった。既存メディアでニュースを見る人は少なくなっていることが分かる。

多様な視点から報道

最後に「報道されるニュースがどちらか一方の視点に偏っていないことをどのように説明するのか、どのようなスタンスを持っているのか気になります」という声を取り上げた。辻は「人々の価値観が対立する中で、どういった立場で伝えるのか、悩みながら伝えている。本当の意味での公正公平とは何か、そこに唯一の答えはない」としながら、多様な視点・アングルから伝えることで視聴者の国際ニュース理解に役立つことを心掛けていると、誠意ある報道姿勢を強調した。

その例として、トランプ政権に近い人物に、また翌日は批判的な元政府高官にインタビューし放送したことを挙げた。公正な報道の難しさは理解できるので、この姿勢は続けてもらいたい。しかし、NHK全体としてはどうか。LGBT活動家の出演は多いが、それに警鐘を鳴らす声をあまり聞いたことがない。(敬称略)

(森田清策)

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