日本学術会議を「国の特別な機関」から特殊法人に改編する新しい日本学術会議法が11日、参院本会議で自民、公明、日本維新の会の賛成多数により可決、成立した。
新法制定のきっかけとなったのは、2020年に菅義偉首相(当時)が学術会議の会員候補者6人の任命を拒否したことだ。この理由を政府は説明していないが、6人は安倍政権下で成立した安全保障関連法や特定秘密保護法、「テロ等準備罪」を新設した改正組織犯罪処罰法などに反対した。
当時、菅氏の任命拒否を強く批判した日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」は、新法についても12日付1面で「平和の理念投げ捨てる」との見出しで「日本学術会議の独立性と自律性を脅かし、『学問の自由』を侵害する日本学術会議解体法」が成立したと報道。2面の「主張」では「新法で、首相任命の監事や評価委員会、外部者による選定助言委員会を設置することで学術会議の人事、運営、財政に政府が幾重にも介入する危険性のあることも具体的に明らかになりました」と強調している。
学術会議が1949年に発足した当初から、共産党は浸透工作を進めてきた。学術会議内には共産党系の会員も少なくない。特にそれを印象付けたのは、2017年に発表された「軍事的安全保障研究に関する声明」だ。戦争、軍事目的の科学研究は行わないという1950年と67年の声明を継承するという内容で、防衛装備庁が2015年度に始めた「安全保障技術研究推進制度」を念頭に置いたものだった。
この制度は将来の防衛装備品開発を目指して研究者に資金提供を行うものだが、声明は「政府による介入が著しく、問題が多い」としている。しかし声明に対しては、安全保障に関わる先端技術の研究開発が制約されたとの声が大学の研究現場などから上がった。
覇権主義的な動きを強める中国や、核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威が高まる中、政府が民間の研究機関と協力し、日本の抑止力向上に資する技術を開発しようとするのは当然のことだ。それを妨害することがナショナルアカデミーの役割ではあるまい。声明は共産党の「空想的平和主義」と歩調を合わせるもので、学術会議における共産党の影響力がいかに強いかが理解できる。
声明では「軍事的な手段による国家の安全保障にかかわる研究が、学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にある」としているが、学問の自由と緊張関係にあるのは共産党の独善的なイデオロギーではないのか。学術会議に国費が投じられている以上、政府が改革に乗り出したのもうなずける。
「しんぶん赤旗」12日付は3面で「学問の軍事動員許さない」「新たなたたかいへ」との見出しで「『戦争する国』づくりに反対し、自由と立憲主義を回復し政治を変えるたたかいの中には、真の学術会議の再建もあります。科学の軍事化を許さないたたかいは続きます。同法強行の日は、新しいたたかいの出発の日です」と書いている。しかし共産党の「たたかい」のため、学術会議を政治利用することは許されない。
「しんぶん赤旗」が新法を「学術会議解体法」と表記するのは、安保関連法を「戦争法」と呼んだのと同じで「悪法」と印象付けるためだろう。だが、新法によって共産党の影響力が「解体」するのであれば歓迎すべきだ。
新法は26年10月から施行される。学術会議の改革は道半ばであるが、特定のイデオロギーに振り回されることのない公正で健全な運営によって国益に資する組織となることを期待したい。





