トップオピニオンメディアウォッチ野党の協力ほしさに擦り寄る与党、国際情勢論じる場もなく国会閉幕

野党の協力ほしさに擦り寄る与党、国際情勢論じる場もなく国会閉幕

“井の中”の国会論議

「井の中の蛙(かわず)のごとき国会論議」――。石破茂首相の下での初の通常国会が22日に閉幕したが、その感想を聞かれれば、少なからず国民はこう答えるのではあるまいか。

「井」の外を見れば、ウクライナ戦争は終焉(しゅうえん)の兆しすら見せず、中東の戦火はイランに対するイスラエルのミサイル攻撃、米国の核関連施設爆撃へと拡大し、わが国周辺では中国空母が太平洋へと押し出し風雲急を告げている。

こうした情勢下、わが国会はと言えば、やれ古米だ、年金だ、選択的夫婦別姓だ、高校無償化だ――等々「井の中」の論議を繰り広げてきた。さすがに産経はこれに“切れて”、「『中東』を論ぜずに閉幕か」(21日付主張)と憤る。

「(イスラエルとイランの交戦を)国会は予算委員会や外交防衛関係の委員会で集中的に審議していない。国会会期を小幅延長してでも、日本と国民に必要な議論をすべきではないのか」

日本は原油の9割を中東に依存しており、安全保障やエネルギー安保、経済への影響は大きいとし、「中東方面に米軍が出動しているが、その間隙(かんげき)を突いて北東アジアで中国が軍事的圧迫を強める恐れもある」と警告している。この時点では国会は開幕しており、トランプ大統領は米軍参戦の可能性に言及していたから産経の主張は理に適(かな)っている。

他紙は、国会同様、「井の中の新聞」である。国会閉幕を論じた在京紙の社説を並べると、日経「懸案先送りの国会は将来への責任放棄だ」(20日付)、読売「少数与党の弊害が目立った」(21日付)、朝日「党利を超えた熟議へ前進を」(同)、東京「懸案先送りを猛省せよ」(同)、毎日「課題先送りの責任は重大」(22日付)といった具合で、読売を除いて金太郎飴(あめ)である。

夫婦別姓求める朝日

読売は「政策の効果が見通せないにもかかわらず、野党の協力ほしさに少数与党は譲歩を繰り返した。一方の野党は、財源の確保を政府に丸投げし、自らが掲げた政策の実現を要求するばかりだった」と述べ、将来世代にツケを回すかのような施策が優先され、負担を伴う先送りがなされたとして、「これではとても『熟議』とは呼べない」と総括する。まあ、そんなところだろう。

日経、東京、毎日が言う「懸案」「課題」、それに朝日が「放置されてきた」として、そろって俎上(そじょう)に載せるのは「政治とカネ」と「選択的夫婦別姓」である。とりわけ「夫婦別姓」の早期導入を声高に唱えている。朝日が「熟議」の進軍ラッパを鳴らすのは、まさにこのためである。

在京4紙だけではない。地方紙もほぼ足並みを揃(そろ)えている。ブロック紙を見ると、北海道「難題先送り 覚悟が見えない」(21日付)、中国「懸案先送り 熟議はどこへ」(22日付)、西日本「熟議がかすむ低調な論戦」(同)、県紙では新潟「審議深まったとは言えぬ」(21日付)、山陽「熟議尽くしたとは言えぬ」(同)、神戸「『熟議』の期待に応えられず」(22日付)と、「難題」「懸案」「熟議」の連呼である。朝日と波長が合う共同の論説配信を社説の元ネタにしているからだろう。

こんな風に日本の新聞はリベラルだらけなのだ。いずれも国会論議と同様に「井の中」だけの話に終始し、国際情勢や安全保障について語らない。

安保情勢見ぬ左傾紙

産経のほかでは読売がサイバー攻撃を防ぐ「能動的サイバー防御」の関連法成立を評価したぐらいだ。他紙は何という内向き論調だろうか。政治記者が永田町界隈(かいわい)で「タコつぼ」化している証左だ。

さて、「井の中の蛙」は「大海を知らず」と続く。蛙が亀に海の話を聞くが、理解できない。夏の虫は夏しか知らないから氷の話が分からない。道を理解しないのは、自分の教わったことに束縛されているからだという(『中国故事物語』河出書房新社)。ならば「世界の中の日本」という道理を理解しないリベラル紙はいかなる教えに束縛されているのか。これは言わずもがな、か。とまれ世界を忘失している。(増 記代司)

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