目標に3%成長15年
14日付毎日「GDP1000兆円と骨太/数字だけ躍る空証文では」、産経「手取り増の成果問われる」、16日付読売「経済を強くする戦略見えない」、17日付日経「政府は賃上げ定着へ骨太な成長戦略を」、18日付本紙「『賃上げ』要の成長どう実現」――。
政府が13日に決定した「骨太の方針」を受けた掲載各紙の社説見出しである。朝日、東京もそれぞれ16日付、17日付で一部扱ったが、首相の現金給付案に絡めたもので、ここでは取り上げない。
列挙した通り、石破政権初の骨太方針への論評は総じて厳しいものとなった。最も厳しいのは毎日で、「実現性には疑問符が付く」「掲げるスローガンも抽象的だ」などと批判のオンパレードだ。
毎日が問題にしたのは、骨太が掲げた「2040年ごろに名目GDP(国内総生産)1000兆円程度の経済が視野に入る」とした目標だ。「名目で年3%の高成長が15年以上も続くことが必要だ」が、「バブル期以降は達成していない。昨年まで2年連続で3%を超えたのは、円安による物価高で押し上げられた面が大きい」とし「現実離れした想定」と批判。政府が指標とする基礎的財政収支の黒字化で、目標時期を従来の25年度から後退させたことにも、「黒字化がさらに先送りされる恐れがある」とした。
産経も財政目標批判
この点、産経も「財政余力を高めることは重要だ」「目標実現の努力を怠ってはならない」とした。同紙はまた、骨太が「減税政策よりも賃上げ政策」としたことに対し、賃上げを起点に消費を刺激し、企業収益や投資の拡大につなげる「成長型経済」を目指すということだとしつつも、「道筋は妥当でも、手取りの増加を確実に果たせるかどうかは別問題だ」と指摘。「国内外の経済環境が激変する中で企業は賃上げ機運を維持できるのか」と疑問視した。
読売は財政に批判はなかったが、「日本経済を強くする道筋は見えにくい。企業の投資を増やす具体策を詰めていくべきだ」と注文を付けた。「具体論になった途端、岸田前政権が推進した政策の焼き直しばかりが目立つ」と「物足りない」というわけだ。
同紙は「日本経済を強くするカギは、投資を引き出す戦略だろう」とし、日本企業の内部留保は約600兆円に上り、投資余力もあるはずで、「投資戦略を練るべき局面にある」と強調。「石破政権が、成長戦略を練り直さなければ、この目標(40年ごろにGDP1000兆円程度)すら到底実現しないだろう」としている。
潜在成長率見た日経
意外だったのは日経で、他紙のような批判は少なく、評価の言葉も見られたことだ。全体評も「方向性は理解できるものの、企業頼みとの印象は拭えない。成長の道筋を政府が示してこそ、企業の賃上げも定着するのではないか」と諭すような論調。
また、物価の上昇で実質賃金の停滞に直面している日本経済について、労働分配率の低下、内部留保の積み上がりなどから「まずは賃上げを起爆剤とした需要創出が必要」との主張には「一定の支持がある」と指摘。賃上げの強調には「所得増→支出増→生産増→所得増→……」という「前向きな循環を働かせる短期的な政策としては一つの考え方だ」と評価した。
賃上げの持続には企業収益の向上という裏付けが必要だが、今回の方針はグリーントランスフォーメーション(GX)など、読売と同様に「具体性を欠いた」と批判しながらも、40年ごろの目標を掲げたことには「潜在成長率を引き上げる視点を打ち出したことは評価したい」とした。
財政健全化目標の遅れにも批判はなく、あるのは「労働と資本の投入量を持続的に増やし、技術の進歩を促すために何ができるのか」「(『骨太』の)成長の道筋を今後は示すべきだ」との注文である。
本紙は成長重視の方向性を評価しつつも、「目標実現に向けた固い決意と実効性のある政策が問われている」とした。
(床井明男)