トップオピニオンメディアウォッチ日本産水産物の輸入禁止解除で中国の対応を伝えず媚中を貫く朝日

日本産水産物の輸入禁止解除で中国の対応を伝えず媚中を貫く朝日

10都県輸入禁止は温存

「強硬一転、歩み寄りたい中国 米と対立激化、対日改善へ 続けた海水監視」―。これはいったい何のことかと目を疑った。朝日5月31日付2面の「時時刻刻」と題する特集記事の見出しである。同日付1面に「東京電力福島第一原発からの処理水放出を受け、中国が実施していた日本産水産物の輸入禁止が解除される見通しになった」との記事があり、「ニュースを深く読み解く」を売りにする同欄がそれを解説している。だが、筆者にはこの見出しは媚中(びちゅう)(中国に媚(こ)びへつらう)としか読み解けなかった。

果たして中国は「強硬一転」したのか。中国は2011年の原発事故後、福島など10都県の水産物の輸入を禁止し、23年8月の原発の処理水の海洋放出に際しては、すべての水産物の輸入を禁止した。このうち後者のみ輸出再開の手続を始めることを日中両政府が合意した。それが今回のニュースのツボである。つまり10都県に対する輸入禁止の「強硬」姿勢は温存したままだ。にもかかわらず「強硬一転」とするのはおかしな話だ。少なくとも10都県民は受け入れ難い。

「歩み寄りたい中国」とはお人好しにも程がある。中国はトランプ米政権の動向を探りつつ、日本を取り込もうとしている。引きずり込もうとしているわけだ。産経同日付に「日本にも歩み寄りの姿勢を見せた形だ」とあるが、中国の「見せた形」を朝日は広報紙もどきにストレートに見出しに採っている。これを媚中でなくて何と言おう。

あきれたのは「続けた海水監視」である。本文にはそんな記述は一字もない。あるのは、昨年9月に国際原子力機関(IAEA)によるモニタリングに中国が加わり、「2回にわたって『異常なし』とする海水サンプルの調査結果を公表し、国内世論の環境を整えた」だけである。中国が海水監視を続けた事実はどこにもない。いったい誰がこんな「捏造(ねつぞう)見出し」を考え付いたのだろうか。

地元の反対は嘘っぱち

そもそも中国は処理水を端(はな)から「核汚染水」と呼び、海洋放出を「最悪の環境破壊だ」「太平洋は日本の下水道ではない」と罵倒してきた。日本を貶(おとし)める「世論戦」の虚偽情報である。放出されるのは、汚染水を多核種除去設備(ALPS)で処理し、それをさらにALPSで処理した上でトリチウム濃度を法令の基準以下にした「処理水」で、それをさらに海水で薄めて法令基準の40分の1未満にしたものである。

ところが、朝日は中国に呼応するかのように放出反対論をぶった。21年4月に菅義偉首相(当時)が海洋放出を決断すると、他紙の見出しは「飲料基準以下に希釈」(読売)、「基準濃度の40分の1」(産経)と安全性を強調したが(同14日付)、朝日にはそれがなく、代わりに「唐突な政治判断 地元反対押し切り」との解説記事を大きく載せた。

だが、「地元反対」は嘘(うそ)っぱちだ。地元中の地元、原発立地の自治体(大熊町・双葉町)はそろって容認し福島県知事は賛否を明らかにしていなかった。漁業団体は「反対」したが、それは風評被害を恐れたもので処理水の安全性が理由ではない。ところが、朝日は福島版などで「汚染水放出するな」と虚偽を垂れ流す左翼団体の活動を盛んに報じ、日本学術会議も海洋放出の安全性について沈黙し、風評被害をもたらすのに手を貸した(本紙5月31日付「原発事故と日本学術会議」著述家・加藤文宏氏)。

同じ漁場の魚規制せず

そのくせ朝日6月3日付社説はどの口が言っているのか、「日本漁船と同じ漁場で中国漁船の取った魚が中国では規制の対象になっていない。中国の強硬姿勢は明らかに行き過ぎたものだった」と書く。真にそう思うなら本文記事で堂々と中国を批判すべきではないのか。それもせず、学術会議批判も怠り、「続けた海水監視」などと媚中の限りを尽くす。福島県民ならずとも怒らずにはおれまい。

(増 記代司)

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