トップオピニオンメディアウォッチ男系男子による皇統の断絶につながる読売の女系容認は危険な提言

男系男子による皇統の断絶につながる読売の女系容認は危険な提言

ひどい朝日の女系論

読売の「象徴天皇制 皇統の存続最優先に考えたい」と題する「女系天皇容認」提言(5月15日付)には保守層だけでなく多くの国民から批判の声が上がっている。産経が出版する月刊『正論』(7月号)は「読売新聞は0点だ」と題する特集を組んでいるが、朝日の「女系天皇」論はどうだろう。こちらは5月28日付に「皇室制度のあり方 女性・女系 将来の道閉ざさずに」との特大社説(通常2本掲載を1本)を掲げた。この採点を筆者に委ねられれば、ずばり「マイナス点だ」と言わせてもらおう。それも巨大マイナス点だ。

エッセイストで動物行動学研究家の竹内久美子氏は産経5月30日付「正論」で、読売の女系容認論に驚愕(きょうがく)し「共産党か!?」と目を疑ったと記している。「天皇制」なる用語(「天皇制」廃止など制度として否定的に使われる)からして既にそうだが、「(読売提言は)皇統を断絶させようとするか、男系男子による皇統を安定してつなぐための重要な案を阻止しようとするもので、皇統の破壊につながりかねない」と指弾している。

この点は朝日社説も何ら変わりがないが、朝日の場合、日本共産党の「天皇制」廃止論をそっくりなぞっているところが筆者には巨大マイナス点と思われるのだ。その理由は次のような視点からだ。

同党は戦前から「天皇制と結びついた封建社会残存物を一掃する民主主義革命」(1927年テーゼ=綱領)を掲げ、終戦直後の46年には皇室を消し去った「日本人民共和国憲法草案」を発表。2020年1月の第28回党大会で採択した現行綱領では「一人の個人が世襲で『国民統合』の象徴となるという現制度は、民主主義および人間の平等の原則と両立するものではなく」と、皇室と民主主義は相容れないと断じている。

抹殺考える唯物史観

では、朝日社説はどうか。こちらも「象徴天皇制と、『個人の尊重』や『法の下の平等』など憲法全体に流れる『人類普遍の原理』と。憲法には異質なものが同居しており、完全に整合させることは難しい」と言ってのける。党綱領の「両立しない」を、朝日は「異質」で「完全に整合させることは難しい」と置き換えているだけで、内容は共産党と瓜(うり)二つというほかないのだ。

こういう考え方は唯物史観の立場から「歴史と伝統」を支配階級の所産として一切合切を否定、抹殺しようとする共産主義特有のものと言ってよい。西欧には英国のように「王冠を持つ民主主義国」(政治学者、勝田吉太郎氏)が存在するが、それを朝日は黙殺しているのだ。

前述の共産党綱領は新たに「ジェンダー平等社会をつくる」ことを盛り込んでいるが、朝日はそれもなぞるように「天皇やそれを支える制度に、社会が克服しようとしている男女不平等が投影されるのは適切ではないのではないか」と論じている。

こうした共産党と朝日の「共闘」で思い出すのは、共産党の熱烈な支持者だった憲法学者の奥平康弘氏(15年死去)の言だ。かつて女系天皇容認が「天皇制」廃止の突破口になると主張していた(『世界』04年8月号)。

女系の次は廃止論へ

奥平氏は女系天皇が登場すれば、男系・男子により皇胤(こういん)が乱れなく連綿と続いてきた「万世一系」に覆うべからず亀裂が入り、そのことによって伝統根拠がなくなり、正統性のなくなった女系天皇の次には天皇そのものの否定論へと“発展”していくと論じた。言わば「女系→廃止」の2段階天皇制廃止論と言ってよい。

共産党の「ジェンダー平等社会」にはそういう狙いがある。だから、それに同調する朝日の女系容認論には巨大マイナス点を付けざるを得ないのだ。竹内久美子氏は読売提言に「共産党か!?」と疑っていたが、朝日のそれにはまごうことなく「共産党だ!!」と記さねばなるまい。読売が提言を引っ込めなければ、こちらにも「共産党だ!!」を付すほかない。

(増 記代司)

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