トップオピニオンメディアウォッチ韓国大統領選「李氏当選」前提に経歴追い展望語る現代・近藤氏

韓国大統領選「李氏当選」前提に経歴追い展望語る現代・近藤氏

素早く小泉氏を取材

週刊現代(6月9日号)が早速、小泉進次郎農水大臣を独占インタビューしている。すぐに時の人を取り上げ、話を聞くのはジャーナリズムの基本だ。次に髙橋洋一氏と飯田泰之氏の「緊急対談」が続く。髙橋氏は元大蔵・財務省官僚で「小泉・安倍・菅の各政権で経済ブレーンとして活躍」し、現在は嘉悦大学教授だが、むしろ動画サイトユーチューブでの発言で知られる。飯田氏は明治大学教授、政府の委員を務める。対談内容は「『減税』ひとつできない石破政権に告ぐ」だ。

かつてならば週刊誌としては及第点の企画だろう。小泉氏は出せば売り上げが違うし「コメ」問題にどう取り組むのかは読者の関心事だ。一方、対談の方は内容からして小泉氏の農水相起用前に行ったもののようで、政治の焦点が「減税」から一気に「コメ」に代わってしまって、急遽(きゅうきょ)小泉氏を引っ張り出した、というふうに見えなくもない。

小泉氏の単独インタビューは新聞や週刊誌など“オールドメディア”でなければ難しいだろう。それに対して髙橋氏・飯田氏の対談はそれこそ週刊誌でやらなくとも髙橋氏のユーチューブチャンネルでもできる。今はネットの方がスピード感も分量も紙媒体を圧倒している。

壮絶な十代を過ごす

それでは週刊誌が本領を発揮できるのはどういう企画なのか。とかくネットは情報が玉石混交でフェイクも混ざるのに対して、まだまだ紙媒体は深く確かな情報と分析で勝る。そう思わせる記事が評論家の近藤大介氏による「『反日モンスター』李在明・新大統領の履歴書」だ。近藤氏は講談社で週刊現代、月刊現代などで活躍したジャーナリスト。今は同社が運営するサイト「現代ビジネス」の編集次長を務める。

韓国大統領選は6月3日なのに、早くも「新大統領」と打っているが大丈夫なのか。韓国は大統領選をはじめとして政治情勢がどう変わるか分からない。選挙戦終盤まではずっとトップを走っていた野党共に民主党の李在明氏だが、与党国民の力の金文洙前雇用労働相が急追していた。投票1週間前から世論調査の発表は禁じられる。この「ブラックアウト」の間に逆転もあり得ると韓国メディアは伝える。中国・韓国問題に詳しい近藤氏が「李氏当選」を自明のこととして言い切るにはそれなりの根拠があるのだろう。

それにしても、数々の訴訟を抱え、城南市長・京畿道知事時代の疑惑も多いのに、なぜ李在明氏は人気があるのだろうか。ずっと疑問に思っていたが、近藤氏の記事を読むとその理由が少し分かる。

記事前半は李氏の経歴を追っている。誕生日すら不明だった出生、極貧の中で少年期から働きに出て、上司に殴られ、作業中に事故にも遭い、「身体障碍と鬱(うつ)病に悩み、何度か自殺を図った」という壮絶な十代を過ごした。もともと優秀だったのだろう。社会や大人の不条理に反発する“生意気な”少年が鉄拳制裁を受けるような時代だった。

中学高校も出られなかったが、大学検定試験を受け、中央大に進学。司法試験に合格し、盧武鉉氏の影響を受け人権派弁護士となる。ただし、文在寅氏のような「運動圏」出身の政治家と違い、青年期・学生時代に思想的洗礼を受けたわけではない。

こう見てくると極貧、労働、苦学、大卒、人権派弁護士、等々、韓国人が好む政治家の要素を備えている。一方の金文洙氏もソウル大、労働運動、逮捕、拷問、政治家になっても質素な生活、信念を曲げない一徹さ、と条件が揃(そろ)っている。韓国大統領には「拷問・有罪・投獄」がマストな条件なのかもしれない。

対日関係は“楽観視”

近藤氏は李氏の政治スタイルを「韓国のトランプ」と呼ぶ。記事の後半、彼が大統領になったら、の前提で書かれているが、気になるのが対日関係。「かつての文在寅時代ほど深刻にはならない」と見通す。「日帝残滓(ざんし)」清算、慰安婦像の設置、福島第1原発処理水放出を「汚染水テロ」と呼んだ人物だが、「個人的に、日本に対する愛着がとても深い」と臆面もなく言う。「まさに『君子豹変す』」(近藤氏)だ。

李在明氏がポピュリストなのは左派思想、左派歴史観に因(よ)っていないからだ。大統領になれば「実用主義」でいくと言っている。李氏の当選を含めて、近藤氏の見方が合っているかどうか分かるのは選挙後だ。(岩崎 哲)

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