トップオピニオンメディアウォッチ学術会議の改組反対で「独立性をなくす」と共産党の代弁続ける朝日

学術会議の改組反対で「独立性をなくす」と共産党の代弁続ける朝日

東京都港区六本木にある日本学術会議の事務局
東京都港区六本木にある日本学術会議の事務局

ベトナム戦争で北応援

1カ月ほど前の本欄で30年前に終結したベトナム戦争を巡る朝日の「大誤報」について書いた。北ベトナム正規軍による軍事的共産化を認めず、「徹頭徹尾、民族解放の戦争であった」(1975年5月1日付社説)と主張していたからだ。それが今や大変節だ。

朝日5月14日付の「ベトナム戦争終結50年」と題するルポ記事では「北ベトナム軍が一気に南下し、首都サイゴンを包囲」し「戦車は官邸に突っ込んだ」と書き、戦車の元操縦手の話を綴(つづ)っている(ホーチミン=旧サイゴン、大部俊哉記者)。北の軍事侵攻と明言しているのだ。

また15日付のルポ記事では「航海生き抜いた移民たち」と題して「社会主義体制や貧困から逃れようと船で海を渡った『ボートピープル』が後を絶たなかった」「約25万人が海上で命を落とした」と共産党政権の迫害も記す。これも当時、看板記者の本多勝一氏は「脱出作戦あの手この手」と題し「(社会主義体制を)喜ばぬ度合いは、旧サイゴン政権時代に『良い思い』をしていた階層の、その『良さ』の程度とほぼ一致する」(77年4月11日付夕刊)と揶揄(やゆ)し、井川一久・元ハノイ特派員は「貧しさからの“出稼ぎ”」(85年11月11日付夕刊=当時、編集委員)と蔑(さげす)んでいた。

こんなふうに朝日は自らの記事や社説の正否を検証もせず、何食わぬ顔で“手の平返し”をする。ただし共産党との親和性は何ら変わるところがない。最近では日本学術会議の改組法案(13日に衆院通過)を巡って日本共産党と息の合った反対論を張っている。

朝日が掲げた社説は4本。政府が法案準備に入ると「疑念に耳を傾け再考を」(2月25日付)と改組反対の学術会議の言い分を代弁し、同法案が閣議決定されると「学問の自由脅かし 禍根を残す」(3月8日付)。衆院で論議が始まると「法案の成否を左右する野党の責任は重い」と野党に反対するようけしかけ(「独立を守る国会の責任」4月17日付)、衆院での採択が迫ると「法案審議で深まる懸念」(5月8日付)と続けた。

学問圧殺と赤旗主張

共産党機関紙「しんぶん赤旗」も同様の論を張り、こちらの「主張」(社説に該当)は「政治介入の制度化は撤回せよ」(2月23日付)、「独立性なくすのが狙い 廃案に」(4月19日付)、「学問圧殺する“御用化”許すな」(5月13日付)など。朝日と赤旗の見出しを並べると、もはやどっちの主張か分からなくなる。

日本維新の会の三木圭恵(けえ)衆院議員は4月18日の本会議で学術会議と共産党の関わりについて「社会主義に同調的な科学者を組織し、学術会議の中心メンバーとして送り込んだ」とし「党70年の本に同党が学術会議の設立に一定の役割を果たしたと誇らしげに書かれている」と指摘。法案採択に先立つ5月13日の衆院本会議での賛成討論では、4月の学術会議総会で現職会員が法案が成立すれば「これまでとは違う人が入ってくる。右に立っている人が入ってくる状態を許していいのか」と懸念を示した発言を取り上げ、学術会議が「イデオロギーによって会員を選別している実態を示している。リセットは待ったなしだ」と訴えている(産経ネット版13日付)。

三木氏の発言に対して共産党の塩川鉄也衆院議員は9日の衆院内閣委員会で「反社会的集団の統一教会系団体と同じもので、(三木氏は)統一教会と一体とみられても仕方がない」と反発した。はあ? 何のことやら。首をかしげる不可解な発言である。

右系の批判を同一視

本紙は3月18日付社説で「(現行推薦制は)共産党系の会員が同じ共産党系の学者を推すため、学術会議の政治利用を止めることができない」とし、「特定のイデオロギーに偏らない会員構成にする必要がある」と指摘したが、これを指すのだろうか。塩川氏の論に従えば、学術会議批判の産経も「統一教会と一体」か。こんな非論理的反論しかできない塩川氏はお気の毒だが、さて、朝日は助け舟を出すか。(増 記代司)

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