
正確でない読、毎、東
17日付日経「米関税リスクと消費動向に細心の注意を」、毎日「米関税との二重苦警戒を」、18日付読売「景気の腰折れ防ぐ経済対策を」、20日付本紙「米関税の悪影響を最小限に」、21日付東京「消費に的を絞り対策を」――。
2025年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値が実質で前期比0・2%減、年率換算では0・7%減と4半期ぶりのマイナス成長となったことを受けて、社説で論評を掲載した各紙の見出しである。21日までに朝日、産経は掲載なし。
掲載5紙はいずれも、長引く物価高にこれからトランプ米政権の高関税の影響が加わるという基本的な構図は同じだが、4半期ぶりのマイナス成長の捉え方で二つに分かれた。
毎日は「(中略)1年ぶりのマイナス成長に陥った。物価高が響いて個人消費が振るわなかった」とし、読売や東京も個人消費が「伸び悩んだことが大きい」(読売)、「停滞していることが主な要因」(東京)とした。
ただ、これは正確ではない。個人消費は前期比0・04%増とほぼ横ばい。成長率への寄与は0・0%と確かに振るわないが、成長の足を引っ張ってはいない。
マイナス成長の主要因は日経や本紙が指摘するように、前期が年率2%を超える高めの成長だった反動という面が大きく、「特に輸入が前期比2・9%増とプラスに転じ、計算上、成長率を0・7ポイント押し下げた」(日経)からだ。
日経は「広告サービスや航空機などが増えたという」とし、本紙は「海外IT大手に支払うネット広告の利用料などで輸入が増えた」と記す。日経はさらに、「輸入は大型案件の有無などで振れやすく、今回のマイナス成長を過度に悲観すべきではない」と指摘、本紙も同様の見解を示す。
大盤振る舞いにクギ
内需全体で見れば、本紙が指摘する通り、設備投資は前期比1・4%増と前期(0・6%増)より強まり、住宅投資もプラスに転じている。
内需は寄与度が前期のマイナス0・2%からプラス0・7%と成長に貢献しているのだが、問題は外需の落ち込みをカバーできるほど十分な力がないということ。そして、その大きな要因が、各紙が強調する、物価高の長期化による個人消費の低迷であり、そうした状況の中で、今後、米政権の高関税政策の影響が本格化するわけである。
日経は、「消費が底割れしないか、投資が増勢を保てるか、いずれも予断を許さない」として、「足元では堅調さを保つ設備投資を含め、内需の先行きに細心の注意を払いたい」とする。
特に24年度に高い伸びを示した雇用者報酬だが、1~3月に限ると、前期比では実質で減少に転じており、「賃上げの流れを途切れさせてはならない」と危機感を示す。
本紙は「賃金と物価の好循環」実現は正念場として、対米関税交渉をはじめ官民挙げて知恵を絞り、米関税の悪影響を最小限に抑えてほしいと訴えた。与野党で議論が浮上している経済対策について、日経は「今回のマイナス成長を財政の大盤振る舞いの口実にするのは短絡的だ」とし、関税の悪影響に備えるのは妥当だが、実情に照らして対象の業種や地域を絞る必要があると説く。冷静な対応として妥当だろう。
コメ対策に家計支援
読売はまずコメ価格抑制への改善策の強化を訴え、トランプ関税に対しては、「影響を丁寧に分析し、企業の資金繰り対策などに万全を期してもらいたい。低所得者層などの家計を支援する策も検討していくことが大切だ」とした。
毎日はリベラル紙らしく、「懸念されるのは中小企業にしわ寄せが及ぶことだ」と強調、「生活を支える政策が急務だ」とした。具体的にはコメの価格抑制へ踏み込んだ施策と家計支援として低所得者対策の拡充など「的を絞」った対応を求めた。東京も毎日とほぼ同様だ。
(床井明男)