トップオピニオンメディアウォッチ日本学術会議の中国への軍事転用技術流出リスクを問わない朝日

日本学術会議の中国への軍事転用技術流出リスクを問わない朝日

「学問の自由」を誇張

衆議院本会議は13日、日本学術会議を国家の特別機関から特殊法人に移行させる日本学術会議法案を可決し、参議院に送った。

法案では日本学術会議を国から独立した法人とする一方、必要な財政支援を行うとしている。また、会員は総理大臣が任命する仕組みから、会議が選任する方法に改めるとした。ただ、運営の評価と監査を行う委員や監事は総理大臣が会員以外から任命するとしている。

これに先立つ8日付朝日社説「学術会議改組 法案審議で深まる懸念」は、「独立性を損ねかねない懸念がいよいよ深まってきた」と書いた。

朝日は、この学術会議問題に関し、事あるごとに社説に取り上げ五大紙の中でも一番、執着してきた経緯がある。論法は「アカデミズムの独立を担保せよ」といった一本調子で、学術会議側の主張をそのまま代弁した格好だ。

同社説では「独立性が損なわれれば、憲法の『学問の自由』を脅かしかねない」と、憲法が保障する「学問の自由」を大上段に振りかざした。だが自由には責任が伴う。その意味で問題視されるべきは、学術会議の歴史的偏向性だ。

1949年1月に発足した学術会議は、当初から日本共産党が浸透工作を進め、大きな影響力を保持してきた。同党は51年、山村工作隊などの非合法組織による武装闘争路線を展開した経緯がある。これは旧ソ連コミンフォルムの指示で、朝鮮戦争(1950~53年)をバックアップするため米軍の後方基地となっている日本をかく乱する目的があった。これに対して政府は52年、破壊活動防止法を作ったが、学術会議はこの破防法成立に反対した。

共産党路線踏襲する

学術会議はその後も共産党の原水爆禁止運動を支援、最近では特定秘密保護法や新安保法制、憲法改正にも反対した。いずれも共産党路線を踏襲したものばかりだ。

また学術会議は、国家と国民を守るための軍事研究を強く忌避し、研究を停滞させてきた。50年、67年、2017年と軍事目的の科学研究を拒否する声明を出した。昨年には軍事、民生の両方で使える「デュアルユース(軍民両用)」の研究を事実上容認したものの、軍事目的の科学研究を行わないとする声明は取り消していない。

特筆すべきは15年、北京で結んだ学術会議と中国科学技術協会の協力促進を図る覚書だ。中国科学技術協会とは、中国の最高意思決定機関である共産党常務委員会の下にある「中共中央書記処」の管轄下にある。さらに同協会は、軍民融合を中国全大学の研究や有力企業に呼び掛けるセンターとなっている存在だ。

そもそも共産党独裁国家の中国は、あらゆる力を糾合して軍事力強化に驀進(まいしん)してきた。中国は戦時を想定し、徴用を含む民間資源の軍事利用を目的とした国防動員体制も整備済みだ。

その強権的統治機構の一角に組み込まれた中国アカデミズムの中軸である中国科学技術協会と学術会議が組むということは、日本のアカデミズムの研究成果が中国に流れ、その研究成果や編み出された技術が軍事転用される可能性があるということになる。

赤い野心を警戒せず

中国は、21世紀の覇権争いの核心技術になるであろうAIや量子技術開発に血眼になって動いている。そうした「赤い野心」を持つ中国の手招きに警戒心もなく応じるようでは、どこの国のための学術会議かと言いたくなる。こうした学術会議のダブルスタンダードを朝日は言及しない。朝日の同社説は「自由な探究や研究の自律性があってこそ学問が発展し、社会や経済に役立つ。大局を見失ってはならない」と総括するが、大局観が欠落しているのは朝日の方だ。

(池永達夫)

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