改憲派が護憲派凌駕
憲法記念日の3日、恒例の改憲賛否を問う新聞ごとの世論調査結果が出そろった。その結果は次のようになる(共同通信1日配信、産経4月22日付、他紙は5月3日付)。▽共同=改憲70%、護憲26%▽読売=改憲60%、護憲36%▽産経=改憲59%、護憲29・9%▽朝日=改憲53%、護憲35%▽毎日=改憲21%、護憲39%。
毎日を除いて改憲が護憲を凌駕(りょうが)している。それだけに毎日の世論調査に疑念が湧く。どうやらトリックを仕掛けたらしい。それは「石破首相の在任中に憲法改正を行うことに賛成ですか」と在任中に絞って問うたことだ。この質問なら保守・改憲派はためらうだろう。なにせ筋の通らない妥協・迷走の石破首相だ。そんな政権下の改憲は危うい。そう考えれば単純に賛成とは答えられないからだ。
実際、毎日には賛否のほかに「わからない」の選択肢があり、それが39%に上っている。明確な護憲派なら「わからない」を選択するはずがないから、これは改憲派と考えてよい。それを加えると改憲60%となり、共同の調査結果とほぼ同じだ。それにしても「わからない」が4割を占める世論調査は設問失格。見え見えのトリックだった。
ところが、毎日は姑息(こそく)である。3日付1面は「改憲『賛成』21% 機運停滞」の見出しで、改憲派があたかも少数であるかのように報じている。水増しならぬ、水抜きの捏造(ねつぞう)と言うほかあるまい。
姑息と言えば、朝日もそうである。3日付1面は「民主主義定着せず48% 10年前の32%より増」をメインに据え、「9条改正反対56%」の見出しも立てている。肝心の改憲賛否は記事でわずかに触れただけだ。
昨年調査では自民党改正案(9条存続+自衛隊明記)も問い、それには賛成51%、反対40%で改正派が多数を占めていたが、今年はこの質問を省いている。都合が悪いことには蓋(ふた)をしたか。
安倍氏批判は大誤報
朝日調査は第2次安倍政権の評価も問うている。結果は、「評価する」が「大いに」「ある程度」を合わせて57%に上り、「あまり」「まったく」を合わせた「評価しない」の40%を圧倒していた。とりわけSNSなどの利用限定層では「評価する」63%で、「評価しない」32%のほぼ倍を占めている。朝日調査でも安倍高評価は不動なのだ(来年はこの質問をやめるか?)。
それで安倍退陣時の朝日社説を思い出した。「(安倍1強の)この間、深く傷つけられた日本の民主主義を立て直す一歩としなければならない」(2020年8月29日付社説)と、「安倍1強=民主主義否定」の構図を描いていたからだ。
だが、朝日記事によれば、15年調査では「(民主主義が)根を下ろしている」は62%に達し、「そうは思わない」32%のほぼ倍を占めていた。朝日が「熟議」などとエールを送る石破政権は、前記の見出しにあるように「民主主義定着せず48%」で、それこそ「民主主義は深く傷つけられ」ているのである。事実はあべこべなのだ。朝日の安倍氏批判は大誤報の類いである。
朝日調査ではアジアで日本を巻き込んだ大きな戦争が起きる可能性が「ある」という回答は62%に上り、15年調査での50%より目立って増えた。防衛力強化については賛成61%、反対10%だ。読売調査でも「脅威を感じる」との回答が88%に達し、防衛力増強賛成は75%に上る。ちなみに原発について朝日調査は廃止25%、存続42%で存続派の方が圧倒的に多い。
浮世離れした左派紙
ところが、朝日3日付社説は「『備え』に際限がないことは軍拡の世界史に明らかで、猛進すれば専守防衛を掲げながら軍事大国と化してしまう」と防衛力増強に異議を唱える。毎日3日付社説も「平和主義と国際協調主義を掲げる憲法を持つ日本」と浮世離れの空想的平和主義を説いている。これだからオールドメディア、ことに左派紙はSNS派からばかにされるのだ。
(増 記代司)