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アゼルバイジャンが「アブラハム合意」参加か―英ニュースサイト

親イスラエルの国家

イスラエルと中央アジアのイスラム教国アゼルバイジャンとの関係が良好であることはよく知られているが、米トランプ政権の発足を受けてこのところ、イスラエルとアラブ諸国との関係正常化合意である「アブラハム合意」への参加の可能性が指摘されている。

英ニュースサイト「ニュー・アラブ」は、「新たな動きとしてここ数週間、米国とイスラエル双方で、アゼルバイジャンをアブラハム合意の枠組みに組み込もうとする動きが勢いを増している」と伝えた。

アブラハム合意は、2020年にトランプ政権が実現したイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、モロッコ、スーダンの国交正常化合意。

アゼルバイジャンはイスラム教徒が人口の大多数を占める。米国務省によると、人口の96%はイスラム教徒、そのうち約3分の2はシーア派が占める。隣国イランはシーア派国家だが、イランとの関係は必ずしも良好とはいえない。

アゼルバイジャンは、旧ソ連からの独立間もない1992年にイスラエルと国交を樹立。2022年に大使館を設置した。以来、政治、軍事、経済で緊密な関係を築いている。

イスラエルとは犬猿の仲のイスラム教国家への配慮から中立的な立場を取ってきた。だが、アラブ・ニュースによると、パレスチナとの衝突に関して親イスラエル的な見解に沿った反ユダヤ主義の定義を学校の教科書に採用、これは「イスラム教徒が多数を占める国として初めて」だという。

密接な経済・軍事関係

経済・軍事での関係はさらに親密だ。「アゼルバイジャンはイスラエルの石油需要の60%以上を供給」しており、「その見返りとしてイスラエルは、アゼルバイジャンに高度な兵器を提供しており、それは20年と23年のアルメニアとの戦争での勝利に重要な役割を果たした」としている。

 「16年から21年の間に、アゼルバイジャンの武器輸入の約69%がイスラエルから」だったとされ、アゼルバイジャンの軍備増強にイスラエルが大きく貢献してきたことが分かる。

アラブ・ニュースはこれについて「1990年代から、戦略的な『エネルギーと武器の交換』というパートナーシップが両国関係の根幹を形成してきた」と指摘している。

中央アジアをカバーするニュースサイト「コーカサス・ウオッチ」によると、「クネセト(イスラエル国会)はイスラエル、米国、アゼルバイジャン3国間の協力強化を提唱、アゼルバイジャンのアブラハム合意への参加を支持した」と報じた。

「3月8日、クネセトで、3カ国の戦略同盟の設立に関する協力強化のための議論が行われた。議論は、アゼルバイジャンのアブラハム合意への参加と、イスラエルとの戦略的パートナーシップの近代化に焦点が当てられた」という。

米による制裁解除か

イスラム教国からの反発の懸念があるにもかかわらず、アゼルバイジャンが米イスラエルにこれほどまでに接近するのは、米国の「自由支援法」の存在がある。ソ連崩壊後、アゼルバイジャンではアルメニアとの間でナゴルノカラバフ紛争が起きており、米国から同法を基に制裁を科され、「直接的な米国の援助と武器供与を禁止」されている。

この制裁の解除がアゼルバイジャン、イスラエルにとって国益となるからだ。

だが、アルメニアとの正式和平合意が交わされていないことが制裁解除への障害になっているという。また、イスラエルにとっては、イランの隣国との関係強化は、宿敵イランへの包囲網強化を意味する。

イランは今のところ、沈黙しているが、イラン周辺の中東情勢に少なからず影響を及ぼすのは必至だ。(本田隆文)

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