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財務相会談で為替目標回避も「安心できない」とトランプ批判の日経

「市場が決定」を確認

4月26日付読売「為替目標ひとまず回避したが」、朝日「為替目標 毅然と対応を」、日経「米国は政策への不安払拭し為替の安定を」、産経「市場ゆがめぬ姿勢を貫け」――。

先月24日、米ワシントンで行われた日米財務相会談で、米国が懸念された為替目標を要求しなかったことを受けて、掲載各紙が論評した社説の見出しである。

トランプ米大統領が円安・ドル高を問題視する中、財務相会談でベセント財務長官はそうした発言はせず、「為替相場は市場で決定し、過度な変動は悪影響を与えることについて認識を再確認した」(加藤勝信財務相)。米国の狙いはいったい何処にあるのか。

そんな状況でも各紙のスタンスは、見出しの通りで、読売は見出しには取らなかったが、「楽観はできない」と強調し、「日本は互いに発展していく上で、為替目標の設定は弊害が大きいと説き続けるべきだ」と指摘する。安全保障をはじめ日米協力を基本路線とする日本にとっては、その通りである。

同紙は「日本政府は今後も警戒を続ける必要がある」とし、その理由として「トランプ政権にはかねて、ドル基軸通貨体制を核とする現在の国際経済の秩序を大きく書き換える構想があるとされる」点を挙げ、同構想の背景にあるとみられるとして、大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長が就任前に公表した論文を指摘した。

論文はドル基軸通貨体制が恒常的なドル高を招き、輸出が不利になって製造業が衰退し、貿易赤字が膨らむ問題があるとして、その一環として各国にドル安で協調を求める合意を結ぶよう提唱している。

このため、「この構想を踏まえれば、交渉の展開によっては、米国が今後、為替目標を求める可能性はある」と言うわけである。

日本は円安誘導せず

朝日は「トランプ大統領がこの先、円安を理由に批判や要求を続けるなら、日本は事実に即して毅然(きぜん)と対応していく必要がある」とする。

朝日が言う「事実に即して」とは、日経や産経も指摘するように、日本が急激な円安に歯止めをかけようと、巨額の円買い介入を実施したことである。

米国への注文を見出しに取るほど、米国への批判が強かったのは日経である。会談の中身に同紙は「安心はできない」とし、「トランプ米大統領は高関税政策をめぐって二転三転するなど、市場を混乱に陥れる言動は目にあまる」と強調。見出しに挙げた通り、「政策の不確実性を和らげ、為替市場の安定に万全を期してほしい」とした。

また、トランプ氏が一時、米連邦準備制度理事会(FRB)議長に早急な利下げを求め、更迭にも言及したことに、「自らが市場をかく乱している現実を自覚すべきだ」と指摘。さらに「円安の是正を狙って、日銀に追加利上げの圧力を強めることがあってはならない」とも断じた。経済紙として市場主義を旨とする同紙の怒り心頭ぶりが窺(うかが)える。

この点は産経も同様で、「懸念するのは、米国が円高誘導への圧力を一段と強め、日本の金融政策を縛ることだ」とする。

読売が具体的な提案

では、どうすればいいか。「日本が市場をゆがめぬ姿勢を貫く」(産経)ことはもちろんだが、朝日は主要20カ国・地域(G20)など「各国の連携強化を急ぐべき」とし、日経は「世界経済の下振れ懸念が強まるなか、各国は協調して米国に軌道修正を促してほしい」、産経は対抗措置を講じた中国も含む場では結束するのは難しいとして、「G20の枠だけにとらわれず欧州や東南アジアなど幅広い国々と連携し、世界経済の不確実性に対処したい」とする。

読売は日米関係に絞り、米国の対日赤字縮小へ、米国産のエネルギーや食料の購入を増やし、対米投資を増やすのが望ましいとしたが、一つの具体的な提案である。

(床井明男)

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