トップオピニオンメディアウォッチ工事遅れや費用増で万博否定の朝日が成功見えると「お祝い」に変節

工事遅れや費用増で万博否定の朝日が成功見えると「お祝い」に変節

万博まずまずの船出

大阪・関西万博が開幕した。会場来訪者は1週間で50万人を突破したというから(産経20日付)、まずまずの出だしだろう。開幕日の13日、万博に難癖を付け続けてきた朝日の大阪(市内)版をネットで見ると「大阪・関西万博」のロゴ入りで「さあ、出会おう 輝く未来」との見出しが躍っていた。

その紙面の肩に吉村洋文大阪府知事の「準備期間振り返る」とのインタビュー記事があり、開催にこぎ着けた苦労話が載っている。吉村知事は、2023年夏ごろから人材不足と資材高騰、個性的な海外パビリオンの造り手不在などが重なり、本当に開催できるのか、「その頃は結構しんどかった…(遅れについて)もし気付くのが半年ずれていたらと思うと、ぞっとする」と回想している。記者は人ごとのように聞いているが、当時、“開催潰(つぶ)し”の批判キャンペーンを張ったのは朝日である。そのことを吉村知事は忘れてはいまい。それでも大手新聞を敵に回さず、すがすがしく取材に応じている(と、筆者には思える)。

その頃、朝日は建設関係者の必死の突貫工事を労働基準法違反で「言語道断」といちゃもんを付け(23年8月1日付社説「なし崩し対応 許されぬ」)、建設経費が膨らんでくると「開催を提唱した維新・大阪府市側と、それを受け誘致に動いた政権は、両者とも責任を免れない。国民の負担増への反発は強く、開催の是非を問う声も出ている状況に真摯(しんし)に向き合うべきだ」(23年10月23日社説「万博混乱の責任 維新も政権も免れぬ」)と、高飛車に維新と「誘致に動いた政権」(すなわち安倍晋三政権)を非難した。

無料招待拒絶は1割

さらに昨年1月には「万博への公費 無責任膨張 繰り返すな」(同1月11日付社説)と批判のトーンを高め、同4月には「『いのち輝く未来社会のデザイン』というテーマは漠然としており、『イメージが湧かない』との声が強い。ネットを通じて海外のモノや情報が簡単に手に入る時代に、博覧会という形で、半年間限りのイベントを催すことへの疑問も少なくない」(同14日付社説「万博まで1年 『なぜ今』見えないまま」)と万博そのものを否定した。それがどの口で言っているのか、開幕すると「さあ、出会おう 輝く未来」と、うそぶいているのである。お見事な変節ぶりと言うほかない。

反万博は共産党が執拗(しつよう)に唱えてきた。2月には大阪府教育庁・子ども家庭局に「万博子ども招待事業に対する請願」を行い、学校が子供を万博に招待するのを中止させようと激しく迫った。他の関西各府県でも同様だ(本紙3月14日付「万博反対運動繰り広げる共産党」日本の進む道研究所代表・安東幹氏、参照)。

その成果か、大阪市内の小中学校の1割(40校)が「迷子や接触事故が起きる可能性がある」と称して万博無料招待を拒絶しているという(ABCニュース・ネット版16日)。共産党系の大阪教職員組合(大教組=全教加盟)が強い学校なのだろう。逆に言えば、9割の学校が無料招待を受け入れている。大阪の教育界も随分、正常化された。

維新の会は橋下徹氏が率いた時代から大教組と闘ってきた。大阪の小中高生の学力は全国最低レベルに落ち込んでいたからだ。橋下氏は府知事時代に「このザマは何なのか」と教委に情報開示を求めたが、教委が拒んだので「クソ教育委員会」と罵(ののし)り、それを契機に教育行政基本条例と職員基本条例を作った。

万博レガシーは残る

吉村氏も大阪市長時代に全国学力・学習状況調査の成績で教員を評価し手当を増減させる人事評価の導入を検討したほどだ(校長の人事評価に反映させる制度は一部実施)。

朝日は維新が安倍氏と通じ改憲を掲げていたから共産党側にくみして反万博キャンペーンを張った。今後、入場者数の推移で万博の経済的評価は左右されるが、レガシーは間違いなく刻まれる。冒頭の朝日記事は敗北宣言のように聞こえてくる。

(増 記代司)

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »