トップオピニオンメディアウォッチ「玉木総理なら」と国民民主代表を持ち上げる文春の思惑はどこに?

「玉木総理なら」と国民民主代表を持ち上げる文春の思惑はどこに?

手取りは大幅に増加

国民民主党の人気が高まっている。「手取りを増やす」「課税最低額103万円の壁を取っ払う」と言って、去年10月の衆院選で大躍進した。今もその勢いは衰えず、それどころか玉木雄一郎代表は参院選後の連立政権の首相候補に擬されるほどだ。

週刊文春(4月24日号)が「もし玉木雄一郎総理ならトランプ恐慌に勝てるか?」の記事を載せている。「国民民主の全政策を徹底検証し、完全シミュレーションを行った」ものだ。

まず「年収の壁」から見てみる。同党が主張するように178万円に引き上げられた場合、実際の手取りはどれだけ増えるのか。「一世帯あたりの減税額は年間十三万八千八百円」で、この額の手取りが増えることになる。

「消費税一律5%」にすることによって年間「一世帯あたり十三万二千四百九十円が手元に残る計算」になり、ガソリンの暫定税率の廃止では同じく1万809円、再エネ発電促進賦課金の一時停止で同1万5721円が残る計算だ。

この他「修学旅行費の無償化」で年に1万7900円、給食費では1世帯中学、小学生が1人ずつだとして12万606円が免除になる。

シミュレーションの結果、「少なくとも一世帯あたりの年間の『手取り増』の金額」は「一般世帯二十九万七千八百二十円、子育て世帯五十二万四千九百八十九円」となり、「われわれの手取りは大幅に増えることは確実のようだ」と結論付けた。

経済効果は評価二分

「では肝心の景気への影響はどうなのか」だが、評価は分かれる。「ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長」は「国民民主案の課税最低額引き上げによる政府の減収は七・六兆円と試算されていますが、長期的にはほぼ同じ額がそのまま消費に回るため、消費の底上げが期待できるでしょう」と肯定的だ。

これに対して「大阪大学名誉教授で経済学者の八田達夫氏」は「課税最低限以下の低所得者には恩恵はゼロです。本来、景気を良くするために必要な低所得者の手取りを増やす政策とは言えず、極めて近視眼的な考え方」と否定している。

次に社会保険。「所得税や消費税よりも社会保険料のほうが負担が大きい。そのため、減税より社会保険料の引き下げのほうが、現役世代の負担を減らすことができる」と八田教授は指摘する。

玉木氏は「原則2割の窓口負担」を掲げているが、これは「医療費を平等に負担する」観点から、高齢世代の負担を現行より増やすもので、国民民主のターゲットが若い現役世代に比重を置いていることが分かるものだ。

さて、国民民主のこれらの主張に対する批判として「それでは財源はどうするのか」がよく言われる。同党は「政府・与党が全体で決めるべきだ」と丸投げだ。これでは「裏付けがないと言っているようなもの」と「経済官庁の幹部」が批判する。

同誌は「短期的にみれば、たしかに玉木総理でわれわれの手取りは増える。だが格差は広がり、財源にも不安があると言わざるを得ないだろう」とまとめ、「玉木氏はなんと答えるか」と記事を結んでいるのだが、「え?」と驚かされる。同誌は国民民主に直接問うていないのか。これをこそ聞くべきだろう。

“文春砲”への警戒を

この記事には作家の橘玲氏による「特別寄稿」が続いている。橘氏は高齢者票に傾きがちな与党の政策を「シルバー民主主義」だとして、それで負担を被る「現役世代の怒りをいち早く感じ取」った玉木氏はその「破壊王」になろうとしていると見る。玉木氏には「『このままでは高齢者に押しつぶされる』という若者たちの恐怖や不安の声がよく聞こえている」のだと。

続けて「今夏の参院選では、自民党が大敗する可能性がある」とし、「そうなると(自民党は)国民民主と連立を組み、玉木総理を担ぎ出すシナリオにも現実味があります」と予測している。

玉木氏をこれだけ持ち上げるのをみると、文春には底意があるのかと勘繰りたくもなる。だから玉木氏はよく身を慎み、榛葉賀津也同党幹事長は代表の護衛と“文春砲”への警戒を怠らないでもらいたいものだ。(岩崎 哲)

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