トップオピニオンメディアウォッチ充実したセカンドライフを送るための処方箋を指南する東洋経済など

充実したセカンドライフを送るための処方箋を指南する東洋経済など

大量転職・定年時代に

50代から60代を中心とした中高年の「大量転職・定年時代」が始まったといわれる。人生100年時代、生産年齢人口の減少から企業の人材不足が指摘されている中、定年を過ぎても、社会で活躍できる場は十分に広がっている。その際に重要なポイントは、定年になる前から、定年後の人生いわゆるセカンドライフを設計し、これはと思う技術のスキルアップを怠らないこと。身に付いた技術は、決して人生に無駄にはならないことを先達者は教える。

そうした中で、セカンドライフの生き方に経済誌が焦点を当てた。一つは、週刊東洋経済(3月8日号)の「40代、50代のための稼げるスキル大全」、もう一つは週刊エコノミスト(3月18日・25日合併号)の「資格で楽しむセカンドライフ」。両誌とも、定年後あるいは定年前であっても勤めていた会社を飛び出し新たな職で第二の人生の花を咲かせましょうというわけである。

かつて、「団塊の世代」という言葉が話題になり、大量の退職者が発生して労働市場に大きな影響を及ぼすと危惧された。2007年ごろの話である。そうした人口の波が今、押し寄せている。その背景には、1980年代後半から90年代前半に大量採用された「バブル世代」の定年退職が本格化しつつあるというのだ。もちろん、こうした状況に対し政府は、2025年度から「改正高年齢者雇用安定法」を施行させ、企業に対して本人が希望するのであれば65歳まで雇用する機会を提供することを義務付けるようにした。すでに、総務省が23年に公表した「労働力調査」によると、定年を迎える60~64歳の就業率は74%に上り、3人に2人以上が定年後も働いており、65~69歳では52%と過半数を超える。

国家資格の取得提案

そこで、まずエコノミストが提案するのが定年後を見据えての国家資格の取得。「会社に残ると給料が減るなら60歳前後で転職するか、思い切って起業を検討するという人もいるだろう。選択肢の一つが国家資格を取得して新たな仕事に生かす道だ」と強調。特集で列挙した資格の数は、社会保険労務士、行政書士、調理師など十数種類に及ぶ。さらに実際に転職して活躍している人を紹介。

中でも行政書士として起業している長谷部惠春さんは都銀を15年に60歳で定年し、5年後に自宅を事務所として開設した。「事務所が高齢者の多い住宅街にあることもあり、取り扱いが多い業務は、遺言書作成、相続手続き、終末期サポート、墓じまい、空き家や家の相続に関する問題など。…人生経験が豊富な中高年は(行政書士に)向いていると思う。相談される方はシニアが多いので、相手も相談しやすいし、こちらも相手の事業が良く理解できると思う」と定年後の人生を綴る。

汎用型スキルの習得

一方、東洋経済は資格の取得もさることながら、定年を見据えて40代、50代で身に付けるべきスキルの習得を強調する。では、どのようなスキルなのか、といえば汎用性のある「ポータブルスキル」である。具体的には二つある。一つは仕事の仕方に関するもので、①現状を客観的に分析できる現状把握②現状と目標の差違を正しく把握できる課題設定③実現可能な計画を作り上げる計画立案④プランを業務に落とし込む課題遂行⑤柔軟に対応できる状況対応―といった技能。

もう一つは人との関わり方に関して。すなわち、①経営陣や関係部署との関わりをスムーズにさせる社内対応②顧客への適切な対応を心掛ける社外対応③主体的に考えて報告する上司対応④しっかりと観察し支援する部下マネジメント―といったように、どこでも通用する技能いわゆる汎用型スキルをしっかりと身に付けることで定年後の転職に十分に生かされ稼げるというわけだ。

SNSやAI(人工知能)が普及していく中で、ウェブを活用したデジタル技術の習得は不可欠となっている昨今ではあるが、人間対人間の人情味の通ったコミュニケーションや交渉術が基本となるのは今も昔も変わってはいない。大学などではすでに、学び直しのリカレント教育の制度もある。両誌とも、「人生100年時代に向けて学び続けよ」と提唱している。

(湯朝 肇)

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »