研究所流出説に箝口令か
トランプ政権による「文化戦争」の一環で、政府効率化省(DOGE)を率いるイーロン・マスク氏が国際開発局(USAID)の解体を目指している。同局がDEI(多様性、公平性、包括性)施策や、LGBT(性的少数者)の権利拡大運動に資金援助するなど、左翼的なイデオロギーを世界に広める対外工作を行ってきたからだ。
こうしたイデオロギー工作の他、USAIDの資金提供は、新型コロナウイルスが流出源との疑いが持たれている中国・武漢ウイルス研究所にも行われていたことが明らかになっている。ウイルスの起源については、天然起源と同研究所起源の二つの説がある。「世界日報」は同研究所からの流出説を盛んに報じてきたが、大統領選挙におけるトランプ氏勝利以降、米政府は研究室流出説に大きく傾いている。この問題に関して、筑波大学システム情報系准教授の掛谷英紀氏が興味深い論考を発表している。
「WiLL」4月号に掲載された「USAID閉鎖で暴かれる対外工作」の中で、ウイルスの起源を追究し、天然起源説に疑問を持ってきた掛谷氏はウイルス学会での発表を拒絶されたという。そればかりか、ある研究会で、ウイルス学者の一人に「新型コロナウイルスの塩基配列を見ておかしいと気づいたのでしょう?」と尋ねたところ、その学者は次のように答えたという。
「二〇二〇年一月に塩基配列が公開されたとき、これは人工ではないかと研究所内は騒然となった。だが、その後箝口令(かんこうれい)が布かれて、そのことについて話してはいけないことになった」
箝口令を布いた人物については「わからない」と口を閉ざしたので分からなかったが、論考の中で、掛谷氏はその箝口令が布かれた研究所は「国立感染症研究所」だと明らかにしている。そして、「ウイルス学の世界の秘密主義は極めて深刻である」とした上で、「自分が事故を起こしたら隠蔽するに違いない」と危機感を募らせ、「そのような人間たちが危険な実験をすることを絶対に許してはならない」と警告するのだった。
この論考を読んで「秘密主義」の日本のウイルス学会と、中国の研究所が重なって見えてしまった。