トップオピニオンメディアウォッチ闘争は「弾劾後」も続く 政権交代を極度に怖れる保守派 【論壇時評】

闘争は「弾劾後」も続く 政権交代を極度に怖れる保守派 【論壇時評】

韓国の尹錫悦大統領への弾劾が認容されるべきかどうか、憲法裁判所は審理を終えて、後は判断を下すだけとなった。危機感を強めた与党や保守派の巻き返しと、野党の国会での横暴が明らかになることによって、当初10%台だった尹氏支持率が一時50%を超えた。これは一方で韓国の深刻な分断状況を示す数字でもある。

代表的な保守紙「朝鮮日報」の朴正薫(パク・チョンフン)論説室長は「銃を持たない内戦状態」だと言い、世界日報(セゲイルボ)の黄政美(ファン・ジョンミ)編集人も「万が一、流血暴動事態にでもなれば」と恐れる。洪準杓(ホン・ジュンピョ)大邱市長に至っては「戦争だ」といらぬ燃料投下までする始末だ。

こういう状況だから、憲法裁がどういう判断を出すかによって、この紙上の「内戦」が本物の衝突になるのかどうか、およそ「民主国家」の日本にいては想像すらできない状況に韓国はある。

だから憲法裁の下す判断に求められるのは「公正」だ。「月刊朝鮮」(3月号)で同誌編集長の裵振栄(ペ・ジニョン)氏が「弾劾後も戦いは続く」と書いている。

まず弾劾が容認される可能性が高い。尹大統領は罷免され、60日以内に大統領選が行われ、今のままならば、おそらく野党共に民主党代表の李在明氏が当選するだろう。大統領選好度の世論調査で常に30%台の支持を得ているからだ。

だから、せめて「尹大統領の立場に憤懣(ふんまん)が残らず、弾劾に反対する国民が弾劾を受け入れるしかないよう、手続き上の正当性がきちんと保証される」必要があるわけだ。つまり保守派が納得し得る手続きと判断が出てこないことには、保守派の憤り、不満は手が付けられなくなる可能性があるということである。

その一方で、現実味を増す政権交代への保守派の“怖(おそ)れ”が凄(すさ)まじい。「野党と左翼勢力は『反乱勢力の根絶』と『大規模な社会改革』について公然と語っている」と裵編集長は指摘する。これは何を意味するかというと、「『反乱勢力の根絶』を口実に、尹大統領を輩出した政党を違憲政党として解散させ、保守的な市民社会組織を閉鎖し、自分たち(野党・左派)を悩ませているメディアを追い払おうとしている」ということだ。真っ先に発行差し止めのターゲットになるのは裵氏が編集する「月刊朝鮮」になるかもしれない。

これはもう「革命」である。既に盧武鉉、文在寅政権で行われてきたことをさらに徹底的に実施し、保守の「根絶」を目指そうというわけだ。

妄想などではない。裵氏は具体的な例を挙げる。「民主主義の聖地」光州の市長は「ここをどこだと思っているのだ」として、「プロパガンダや扇動を行う反憲法・反民主的な集会は許さない」として、保守派の弾劾反対集会の許可を拒否したという。これに同調した野党議員は「集会の自由はあるのだから、相応(ふさわ)しい場所に案内してみたら」として、ごみ埋め立て地を推薦したというから、既に勝者の驕(おご)りが覗(のぞ)いている。

保守派があまりにも悲観的過ぎると思われるが、「党争」を繰り返してきて、敗者は徹底的に排除されてきた歴史から、最後は力の「内戦」になる可能性がないとも限らない。杞憂(きゆう)で終われば幸いだが、「大韓民国を守る闘いは続けなければならない」という裵編集長の言葉には悲壮感が漂っている。(岩崎 哲)

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