トップオピニオンメディアウォッチ千葉県のLGBT相談わずかで肩透かし食らっても体制拡充の怪

千葉県のLGBT相談わずかで肩透かし食らっても体制拡充の怪

性倫理の乱れを危惧

千葉県知事選が16日投開票となる。再選を目指す現職の熊谷俊人氏(47)に対し、新人3人が挑むが、自民、立憲民主など5党の地方組織の支持を受ける熊谷氏の優位は動かない。あえて争点を言えば、1期目の熊谷県政に対する評価で、過去最高となった前回得票数140万票にどれだけ上乗せできるか。

熊谷県政を検証するにあたり、注目したいのが前回公約に掲げ、2023年末に成立させた「多様性尊重条例」(昨年4月1日施行)。採決では今回、熊谷支持に回った自民党(前回は対抗馬を推薦)から多数の反対・退席者を出した経緯がある。基本理念として性的指向・性自認の尊重、つまりLGBT(性的少数者)への理解を謳(うた)っていることから、性倫理の乱れや「女性」を自称する男性による女子トイレ使用につながるなどの懸念があるからだ。

その条例に関して、興味深い記事が産経新聞千葉版に載った(2月17日付)。同条例施行を受け、県は昨年8月、LGBTらを対象とした相談窓口を設置したが、相談は半年で25件と少なかったというのだ。内訳は電話15件、メール10件。筆者はその程度だろうと不思議に思わないが、県はもっと多いと予想していたようだ。相談が少ないのは体制が不十分だからで、体制拡充のため25年度予算案に前年度の10倍、1千万円を計上した。

県多様性社会推進課によると、相談は県内に在住・在勤・在学する人を対象に、第2土曜日と第4火曜日の月2回、電話とメールで受けている。「自分の性別に違和感がある」「家族、友人が性的指向や性自認に悩んでいるかも」など、不安や悩みを抱えている人は「お気軽にご相談ください」と呼び掛けてきたし、チラシも作った。

知事への忖度で増員

熊谷知事の肝煎り施策の一つと言えるのに、窓口を半年運用しても相談は25件だけというのだから肩透かしを食らった格好。これなら相談体制は現状維持、もしくは縮小してもいい、と思うのが常人だろう。ところが、県の役人は知事の顔をつぶしてはならないと忖度(そんたく)したのか、「1都3県の中では相談日数や時間が少ない」として、相談体制の拡充を決めたのだという。(産経)

LGBTの割合について、メディアは長年「10人に1人」あるいは「左利きの割合と同じくらいの割合」「教室に2、3人」はいると、数の多さを盛んに喧伝(けんでん)してきた。マジョリティーがその多さを認識できないのは、当事者が差別を恐れ、カミングアウト(打ち明けること)ができないからで、そこに多様性尊重条例の意義がある、との論理を打ち立て、LGBT施策は全国の地方自治体に広がっていった。熊谷県政もその流れにある。

多様性の尊重といっても、行政は費用対効果を考える必要がある。産経によると、今後は相談体制を責任者1人と、相談員を3人に増やし、回数も毎週1回に増やす。また窓口開設時間もこれまでの1回3時間から4時間に延ばす。これに対して、先月の県議会予算委員会で、1人会派「有志の会」の折本龍則県議(40)は「予算の拡充で人件費は単純計算で時給3906円になる。今後の稼働状況を注視する必要がある」と釘(くぎ)を刺した。同県議は多様性尊重条例の採決に際しては、持ち時間をオーバーしても反対討論を続け、信念の強さを見せた保守派の県議だ。

税金の無駄遣い懸念

千葉県のLGBT施策では昨年秋、人権講座でトイレ、銭湯、更衣室などの女性スペースに自称「女性」の男性が侵入することを防ぐための講演を行う予定だった女性講師が突然講演をキャンセルされる事態が発生した。過激なLGBT活動家による妨害活動が行われたのだ。県の担当者は開催を主張したが、熊谷知事が最終的に中止を決めたとみられている。熊谷氏の再選は間違いないが、多様性尊重を掲げながらも税金の無駄遣いが懸念され、また女性の人権軽視、言論統制と非難されても仕方がない事態が起こっていたことを、有権者は知っておくべきだろう。

(森田清策)

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