トップオピニオンメディアウォッチ朝日がまた「死刑廃止論」産経は重大犯罪の「遺族心情」「抑止力」訴える

朝日がまた「死刑廃止論」産経は重大犯罪の「遺族心情」「抑止力」訴える

国の務めと廃止暴論

内閣府が死刑制度の是非を問う世論調査を5年ぶりに行ったところ、朝日が難癖を付けた。この話題を先週、本欄で紹介したが、調査結果の死刑容認8割超えがよほど癇(かん)に障るのか、2月26日付社説で蒸し返している。それで当方も蒸し返すことにする。

朝日社説は「死刑制度と世論 多様な思い 拾ってこそ」の見出しで、調査の「死刑もやむを得ない」との選択肢が容認への誘導だと批判、「(死刑廃止の)国が7割を超え」ており「米国、日本以外の先進国はもっぱら政治のイニシアチブで死刑のない社会を確立した」とし、「民意の行方をただ眺めているのではなく、豊かな議論を主導していくことこそ、国会と政府の務めだ」と説教している。

世論調査結果を報じた記事(22日付)では「日本の死刑制度について考える懇話会」が昨年11月にまとめた提言を引用して容認論を批判していた。ならば懇話会はいかなる組織で、どんな論議があったのか。朝日は沈黙しているので詳報した産経1月8日付を以下、紹介しておこう。

同会は昨年2月に発足。委員の7割が廃止派で、事務局は死刑廃止を唱える日弁連に設置。検討会のはずなのに当初の仮名が「死刑制度見直しを提言する懇話会」とされていた。全12回の会合では廃止派の刑法学者、弁護士、元裁判官などがヒアリングに登場。冤罪(えんざい)の可能性などを指摘する声に存続派が反論し結論はまとまらず、報告書には「検討すべき」の文言が並んだ。

組織犯罪抑止に効果

会合で異彩を放ったのは、平成19年に闇サイトで知り合った男3人に娘が拉致・殺害された磯谷富美子さんの陳述で、「遺族の唯一の望みである死刑判決まで取り上げるような日本にならないことを切に望みます」と訴えた。また死刑制度が組織犯罪の抑止に有効とする意見もあった。

死刑が廃止されたイタリアでは1980~90年代に200人超への殺人罪で26回、終身刑を受けたマフィアのボスが服役したままトップを維持。92年には警察や検察幹部を部下に爆殺させた。死刑制度があれば違う結末も望めたかもしれない――。

産経記事には委員の一人、金高雅仁元警察庁長官の「死刑は殺人による遺族の悲しみ、苦しみをなくすためにある。犯罪の抑止効果もある。死刑制度は存続すべき」とのコメントもあった。金高氏は「特定危険指定暴力団『工藤会』トップに対する一審の死刑判決後、暴力団の襲撃事件は激減した。死刑がなくなれば、殺人を命じられた組員は実行せずトップに殺されるより実行して服役する方を選ぶだろう。何十人殺しても死刑がないならトップも指示をためらわない」と指摘している。

朝日紙面にも死刑存続論があった。昨年12月17日付オピニオン面「耕論 冤罪と死刑制度」の中で、弁護士の高橋正人氏(「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」事務局長)が次のように述べている。

被害者遺族の思い無視

「被害者遺族は『真犯人』への死刑執行を望んでいるのであり、冤罪を望んでいる人は誰もいません。両者は別次元の話であるのに、死刑反対派は、『冤罪があっても良いのか』と死刑賛成派を非難します。論理のすり替えも甚だしいです。……凶悪事件のほとんどの被害者遺族は『生きて償わなくてもよい。死んで償って欲しい』という意見を持っていると実感します。近代国家ではあだ討ちは認められていません。その代わり、国家が遺族の無念の思いを晴らしてやろう、というのが近代国家の在り方です。『生きて償わせる』といっても、犯人がいくら反省しても、被害者の命は返ってきません。だからこそ命を差し出して償ってくれと言っているのです」

こうした「被害者遺族の思い」は社説に一文字も載らない。そのくせ「多様な思い 拾ってこそ」と平然と言う。朝日は日本をイタリアのような「凶悪犯天国」にでもしたいのか。これではエセ人権新聞の誹(そし)りを免れない。(増 記代司)

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