政府は18日、エネルギー政策の中長期的な指針となる新たな「エネルギー基本計画」を閣議決定した。原発については東日本大震災後の政策を転換。過去の計画に記載してきた「可能な限り依存度を低減する」との文言を消し、再生可能エネルギーと共に二酸化炭素(CO2)を出さない脱炭素電源として「最大限活用する」方針を明記した。
再エネについては2040年度の発電量に占める割合を4~5割程度に引き上げ、原発は建設中を含む36基のほぼすべての稼働を前提に2割程度とする目標も設定した。達成するのは簡単ではないが、AI(人工知能)の普及によってデータセンターや半導体工場の立地が相次ぎ、電力需要は増加すると予測されている。いかに脱炭素化を進めつつ電力の安定供給を図るかが政府の大きな課題だと言えよう。
日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」は22日付「主張」でエネ基本計画を取り上げて「(東京電力福島第1原発)事故の教訓を投げ捨て、財界や大手電力会社の要求を丸のみした言語道断の露骨な原発回帰」と断じた。反原発のイデオロギーを前面に打ち出している。
さらに「石炭火力を2030年以降も温存することも重大」と批判。「日本がなすべきは、30年度までに原発ゼロ、石炭火力ゼロにすること」と強調している。しかし、これも現実無視の主張だと言わざるを得ない。
日本はエネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼っている。エネルギー安全保障の観点からは多様な電源を確保することが望ましい。原発や石炭火力も例外とは言えない。
原発を巡っては、福島第1原発事故後に作られた新規制基準を満たしているかどうか安全審査が行われており、新規制基準は「世界一厳しい」と言われている。安全性の向上した革新軽水炉や高速炉、高温ガス炉などの開発も進んでいる。
政府は原発から出る使用済み燃料を再利用する「核燃料サイクル」の実現を目指しており、今回のエネ基本計画にも盛り込まれている。核燃料サイクルは資源を有効利用できるだけでなく、高レベル放射性廃棄物の量を減らせるメリットがある。日本にとっては重要なエネルギー政策だと言えよう。
また石油や天然ガスは中東など特定の地域で産出されるため、政情不安などが生じた場合は確保に支障を来すことが考えられる。これに対し、石炭は世界中で産出されるため手に入れやすい。確かに石炭火力のCO2排出量は多いが、石炭火力を利用しつつ、CO2を回収して地中に貯留する「CCS」の導入を進めた方が現実的だろう。
一方、公明党機関紙「公明新聞」は25日付主張で取り上げている。「今回の特徴は、電源構成の中で初めて再エネを最大電源に位置付けたことだ」とした上で「再エネの拡大には新技術の飛躍的な発展が欠かせない。政府は新技術の開発・導入を一段と後押ししていくべきだ」と強調している。
その通りだが、再エネには天候によって発電量が左右されるというデメリットがある。設備を建設することで自然環境や景観が悪化する側面もある。政府は再エネを「最大限活用する」のであれば、こうした課題をどのように克服するのか、国民の前に分かりやすく示す必要がある。(宮田陽一郎)





