トップオピニオンメディアウォッチGDP600兆円突破でも消費弱い状況に物価高対策を問わぬ各紙

GDP600兆円突破でも消費弱い状況に物価高対策を問わぬ各紙

大台突破に32年要す

18日付読売「GDP600兆円/国民が恩恵実感できる経済に」、日経「外需頼みの成長脱し消費の押し上げを」、20日付本紙「成長継続も喜べぬ消費減速」、22日付産経「GDP600兆円/消費主導で経済再生図れ」――。

年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値が3期連続のプラス成長となった。その結果、24年通年でのGDP(速報値)が物価の影響を含めた名目で600兆円の大台を超えたことを受けた掲載4紙の社説である。今回も掲載はいずれも保守系紙だけで、左派系紙は掲載していない。

さて本題だが、読売と産経がタイトル見出しに取った「GDP600兆円」は、両紙が指摘するように、15年に当時の安倍内閣が目標に掲げた数字であり、9年かけて達成したことになる。

 一つの節目を迎えたことに、読売は「国際的には国力を示す重要な指標であり、目標を実現したことには一定の意義がある」と評価するものの、「これまでの成長速度は遅かったと言わざるを得ない」と不満をこぼす。

1990年代以降、低賃金、低物価、低成長の長期停滞に入り、100兆円増やすのに32年を要したからで、その間に、中国とドイツに抜かれて世界2位から4位へと転落し、インドに抜かれるのも、そう遠くないとみられている。

恩恵実感できぬ成長

問題は名目GDPが大台に乗ったとはいえ、「国民が恩恵を実感できない」ことで、「GDPの成長が実体経済の好調さの反映ではなく、物価高による面が大きいからだ」と強調する。物価変動の影響を除く通年の実質GDPは、前年比0・1%増とほぼ横ばいで、産経も「物価高によってかさ上げされた側面が大きい」と指摘する。

確かにその通りで、読売は「物価高を克服して経済の好循環を実現するには、春闘で高い賃上げを継続し、個人消費の拡大につなげることが必須となる」と説くのだが、春闘では2年連続で歴史的な高い賃上げを達成しているにもかかわらず、いまだに実現できずにいるのはなぜか。

産経も「過去2年にわたり、高水準の賃上げが実現したものの、物価変動を考慮した実質賃金は安定的に物価上昇を上回ることができずにいる」と指摘する。

高水準の賃上げ実現だけでは何かが足りないということなのだが、産経が説くのは、GDPの過半を占める個人消費が昨年は実質0・1%減と停滞していることから、「力強い賃上げを継続できなければ、多くの国民は経済成長を実感できまい」「日本経済の再生には、今春闘で高水準の賃上げを継続することで消費者の節約志向を払拭し、個人消費が力強さを取り戻すことが欠かせない」と、結局は「高い賃上げの継続」の繰り返しなのである。

日経は10~12月期の日本経済を、「緩やかな成長の流れは途絶えていないものの、個人消費をはじめ内需は力強さに欠ける」「外需主導による成長では先行きは楽観できない」とした。本紙も同様である。

実質年率で2・8%増と市場予想を上回る成長率にも、「手放しでは喜べない」と日経。個人消費が前期比0・1%増と7~9月期の0・7%増から減速しているからで、「コメ価格の高騰など長引く物価高は消費者心理の重荷になっている」とした。また、計算上、GDPをかさ上げした輸入の不調は、本紙も指摘したが、「内需の弱さの裏返し」であるからだ。

高賃上げも弱い内需

そんな日経が説くのも、やはり、「内需の柱である消費の継続的な拡大は欠かせない」「今年の春季労使交渉での高水準の賃上げ継続は、消費復活の大前提といえるだろう」である。

3紙が指摘するように、高水準の賃上げの継続は当然であり大前提だが、同時に、物価高対策も依然欠かせないはず。しかし、この点の指摘は本紙だけ。財政資金を使っての物価高対策はやむを得ないと思うのだが。

(床井明男)

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