左傾化と米政権決別
米国のトランプ政権による「常識の革命」による〝変化の波〟が日本にも届くかもしれない、いや、届いてほしいと、今、ユーチューブやX(旧ツイッター)は大盛り上がりだ。
大統領就任式(1月20日)で強調されたことで話題となった常識の革命とは、政治に社会の支柱から排除されていた庶民感覚を取り戻すことで実質、左翼思想との決別を意味する。そのことはDEI(多様性・公平性・包摂性)政策の見直しが進んでいることを見れば明らかだ。
政府効率化省(DOGE)を率いるイーロン・マスク氏は国際開発庁(USAID)解体を打ち出した。これは連邦政府の無駄な支出削減の一環だが、海外でLGBT(性的少数者)の権利拡大支援など、民主党政権が進めてきた政策がトランプ政権の常識から外れ、無駄だと判断されたわけだ。
このため、日本でLGBT運動に反対する人たちは、米国の常識革命の波が日本にも到達し政策の見直しが起こることを期待する投稿であふれている。とはいえ、SNS上には、真偽不明の情報が飛び交うから、利用者は冷静に判断することが肝要だ。
1961年設立のUSAIDは1万人以上の職員を抱え、感染症対策、貧困対策支援などの非軍事の国際協力を、途上国中心に130の国・地域で行ってきた連邦政府の独立機関だ。ところが、Xにはそれを「ディープ・ステート(闇の政府)」の任務を遂行していたとするポストもある。前述したように、この機関は評価できる人道支援も多くやってきたのだから、存在そのものを「悪」とするのは過剰反応か陰謀論の域を出ない。
膨大な金で内政干渉
では、USAIDの資金はどんな使われ方をしてきたのか。2023年の予算は約400億㌦(6・2兆円)で、そのうちLGBT関連だけ見ると①セルビア150万㌦(職場での多様性促進)②コロンビア4万7000㌦(トランスジェンダーオペラ)③ペルー3万2000㌦(トランスジェンダー漫画本④グアテマラ200万㌦(性転換とLGBT活動)となっている。
この数字はNHKが「国際報道2025」(2月4日放送)で報道したものだ。Xには「マスコミさん、『USAID』が270万以上ポストの前代未聞の世界トレンドも報道せず」というポストもあった。しかし、この問題については、テレビ・新聞の、いわゆる「オールドメディア」もかなり報道している。
公表された数字を見れば、USAIDが「内政干渉」とみられても仕方がないほど他国のLGBT活動に入れ込んでいたのは否定できない事実。「トランスジェンダーオペラに、なぜわれわれの税金が投入されるのか」と、怒りを覚える米国民もいるだろう。
LGBT運動支援で、米国による内政干渉といえば、2年前を思い出す。23年春、LGBT理解増進法が成立する前、エマニュエル米駐日大使(当時)がXやその他のメディアで法制定を促す発信を積極的に行い日本の有権者、特に保守層からひんしゅくを買った。
そんなこともあってか、元財務官僚で経済学者の高橋洋一氏はXに「USAIDから、万が一、日本へのLGBT工作なんかが出てきたら、大騒ぎになるだろうな」(2月6日)と投稿している。同氏はその後に続けて「もしもの話だが」と断っているが、あり得ない話ではない。エマニュエル氏だけでなく、米国の民主党政権が、日本におけるLGBTの「主流化」(権利尊重)を進めるため、内政干渉まがいのことを行ってきたことは周知の事実だ。
日本に工作資金流入
オバマ政権だった13年から、日本のLGBT当事者や活動家を米国に招いて主流化のノウハウを学ぶ研修ツアーが行われている。費用は米国務省が全額負担した。筆者は研修に参加した当事者から「日本のLGBT支援団体や活動家への資金提供ルートを調べるべきだ」と言われたことがあるが、取材の困難さから諦めたことがあった。
USAIDの資金が外国のLGBT工作に使われていた事実が明らかになったのだから、日本にも工作資金が流れているのではないか、と疑ってみるのは過剰反応ではないだろう。
(森田清策)