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フジテレビ問題の真相究明求めるNW日本版、再宣戦布告の文春

本来の「記者の仕事」

週刊文春(2月13日号)のコラム「新聞不信」は中居正広氏の女性トラブルとフジテレビ問題に関して、「本来の記者の仕事はこうだろう。女性が受けた被害の事実を掘り起こし、それを身内で収めようとしたテレビの実情を暴く」ことだと指摘している。それほど複雑な仕事ではない。

何が真相究明をもたつかせているのか。早々に引退してだんまりを決め込んでいる中居氏、守秘義務に縛られて具体的被害を口に出せない女性、大物タレントに忖度(そんたく)したのか、関係する女性を守れもしなかったフジテレビの体質…。第三者委員会の調査・発表を待つのでなく、真相を究明するのが「記者の仕事」だろう、というわけだ。

そんな中、ニューズウィーク日本版(2月11日号)が「フジテレビ問題の真実を知る唯一の方法」を書いている。ライターの西谷格氏の記事だ。結論的に言えば、守秘義務に縛られている被害女性が声を上げ真実を語れるようにしてやろう、ということだ。被害女性が何があったかを語れば、真相は明らかになる。中居氏がやったことも、フジテレビの対応の中身も。

西谷氏はもし中居氏側が守秘義務違反で女性を訴えるようなことがあれば、金銭的な支援をしようではないか、とまで呼び掛ける。氏は善意で言っているのだろうが、どうしても真実を引っ張り出したい一心で“けしかけて”いるようにも見える。

被害女性は自身が晒(さら)されることを惧(おそ)れて、何があったかを語っていないが、文春で「許せない」との心情も吐露しているから処罰感情は強い。しかし、今後も“芸能活動”を続けていくには、中居氏・フジテレビと正面切って衝突し、遺恨を残したり、社会には「被害女性」として記憶されることは避けたい。女性自身の態度がこの問題の真相究明を押しとどめているようにも見える。

しれっと誤り上書き

女性が中居氏を訪ねた経緯に「フジテレビ編成局幹部A氏」が関与していたか否かを巡って、週刊文春が訂正を出した。あの10時間半に及ぶフジテレビの記者会見で「A氏の関与」が激しく追及されたが、文春の記事が、A氏がセッティングして、結果的に女性を中居氏と二人きりにした“ように”読めることで、また、女性もそのように理解していたらしいことで、あの消耗的な追及劇となった。

これには最初から違和感があった。文春の第2弾記事からは女性が中居氏から誘われたとあるのに、なぜ追及する記者らの側で「A氏の仕組み」との前提が修正されていないのだろうかと。

その「誤読」であの追及になったことを受けて、元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏が「しれっと誤りを上書きするのは不誠実」と指摘し、文春は訂正を出してしまった。橋下氏の指摘はもっともだ。しかし、記事を読めば、内容が変わっていることは分かる。読解力の問題にすらならない。文春も2弾からは中居氏が女性を誘ったと書いてあると突っぱねればいいものを、なぜ訂正を出したのか、文春らしくない。

だが、それで黙っている文春ではなかった。2月13日号ではトップ記事で「フジテレビ女性アナ接待証拠LINEを公開する」を載せ、ことの本質は大きく違ってはいないと再反論している。

「一連の記事のテーマは、大きく分けて二つある。第一に、フジという巨大企業が被害に遭った一人の女性の訴えを握り潰したこと。そして一年半にわたり中居に聞き取り調査をすることなく、彼の番組を作り続けたことの是非である」

その上で「A氏を中心とする“上納文化”が存在するということ」を改めて追及する再宣戦布告のような記事だ。しっかり戦うために、小さな誤りを修正しておいた、ということだろうか。

他のメディアも追及

このフジテレビの体質について他メディアも追及し始めている。この週発売の各誌も「フジサンケイ帝国『日枝久』総帥に誰も引導を渡せない特殊事情」週刊新潮(2月13日号)、「日枝支配の源泉と闇」AERA(2月10日号)などだ。

記者諸兄にはぜひ「仕事」に励んでもらいたい。

(岩崎 哲)

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