設問で違う調査結果
今年に入って選択的夫婦別姓を巡る各紙・通信社の全国世論調査の結果が報じられている。興味深い内容なのでまずはこれを紹介したい。
▼時事通信(1月16日配信)「通常国会では選択的夫婦別姓制度導入の是非も論点となる。これについて尋ねる」(記事より抜粋)
・別姓制度を導入 28・2%
・同姓制度を維持 30・8%
・旧姓の通称使用拡大 33%
▼毎日(1月20日付)「選択的夫婦別姓制度の導入に賛成ですか」
・賛成 42%
・反対 23%
・どちらとも言えない34%
「結婚前の名字を通称として仕事や行政手続きなどで使える機会を増やすことに賛成ですか」
・賛成 62%
・反対 10%
・どちらとも言えない 27%
▼産経(1月21日付)「希望すれば、夫婦それぞれが結婚前の名字を名乗ることができる『選択的夫婦別姓』について、立憲民主党や公明党は今年の通常国会で実現させるための法案の成立を目指している。『選択的夫婦別姓』導入の法整備についてどう思うか」
・賛成 37・5%
・夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用を広げる 45・2%
・反対 14・7%
・他 2・6%
▼共同通信(1月26日配信)「あなたは、希望する夫婦が結婚後も結婚前の名字を名乗れる『選択的夫婦別姓制度』の導入に賛成ですか、反対ですか」
・賛成 59・4%
・反対 32・7%
・分からない無回答 7・9%
▼読売(1月27日付)「夫婦の名字について、あなたの考えに最も近いものを選んでください」
・夫婦は同じ名字とする今の制度を維持する 24%
・夫婦は同じ名字とする制度を維持しつつ、通称として結婚前の名字を使える機会を拡大する 48%
・法律を改正して選択的夫婦別姓制度を導入する 26%
・答えない 2%
誤解招く産経の質問
時事・産経・読売では別姓導入は少数派にすぎなかった。毎日は昨年9月調査では別姓賛成50%、反対28%、どちらとも言えない22%だったが、今回は賛成が8%減った。反対も5%減ったが、それらはどちらとも言えないに移った(12%増)。これは初めて通称使用拡大を問うた影響と思われ、通称拡大賛成は実に62%に上った。
そもそも導入の賛否だけを聞くこと自体、調査手法として間違いだ。通称使用も「結婚後も結婚前の名字を名乗れる」から通称派が賛成派に誘導されかねないからだ。実際、少なからず誘導されていた。
その意味で産経の質問も疑問だ。「希望すれば、夫婦それぞれが結婚前の名字を名乗ることができる『選択的夫婦別姓』」と問えば、同様の誤解を招く。だから時事・読売では導入賛成が2割台なのに産経では4割近くに上っている(産経よ、しっかりせよ)。いずれにしても現行同姓制度維持+通称拡大が6割以上を占め、それが大勢である。
賛否2択はエセ調査
こう見ると、賛否2択の共同は世論誘導を狙ったエセ調査と断じてよい。ところが、共同の配信モノで紙面を埋める地方紙は、1月27日付で「選択的別姓『賛成』59%」「別姓 自民支持57%賛成 党内の保守派とギャップ」(福島民友の場合)などと平然と偽情報を報じた。ちなみに時事によれば、自民支持層に限ると同姓維持41・2%、通称使用拡大31・9%、別姓導入19・6%の順となり、別姓派は2割以下だった。
さて、朝日は1月の世論調査(20日付)では何と質問から外してしまった。ついに白旗か。そのくせ25日付社説は「与野党で熟議の成果を」と唱え「長年の宿題となっている選択的夫婦別姓の法制化」を迫る。朝日の熟議とはしょせん、イデオロギー的プロパガンダにすぎないのだ。(増 記代司)