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自民党 新年の決意、立党70周年で「改憲前に進める」

伊勢神宮参拝を終え、年頭の記者会見をする石破茂首相=6日午後、 三重県伊勢市
伊勢神宮参拝を終え、年頭の記者会見をする石破茂首相=6日午後、 三重県伊勢市

緊急事態条項、合区解消など

自民党機関紙「自由民主」1月7・14日合併号は、1面で石破茂総裁(首相)、菅義偉副総裁、森山裕幹事長の新年の決意と抱負を紹介している。

今年は自民党立党から70周年の節目の年だ。昭和30(1955)年11月15日、当時の自由党と日本民主党の「保守合同」によって自民党が誕生した。石破氏は「党是である憲法改正を前に進めます。国民的な議論を深めていただくべく精力的に取り組んでいきます」としている。

立党時の「党の使命」では、敗戦後の初期の占領政策について「(その狙いが)主としてわが国の弱体化に置かれていたため、憲法を始め教育制度その他の諸制度の改革に当り、不当に国家観念と愛国心を抑圧し、また国権を過度に分裂弱化させたものが少なくない」と指摘。「現行憲法の自主的改正を始めとする独立体制の整備を強力に実行」することを打ち出している。国内外の情勢は当時から変化したとはいえ、改憲の重要性は変わっていない。

紙面には他にも改憲に触れた箇所がある。10面の「提言 令和7年自民党に期待する」では、関西大特別任命教授で社会安全研究センター長の河田恵昭氏が、緊急事態条項を憲法に明記するよう訴えている。

河田氏は災害対策基本法に盛り込まれた緊急事態条項について「(昭和36年の)基本法施行以来、一度も適用されていない。関連する法律と調整しなければならず、時間がかかり過ぎるからである」として「憲法は法律の上位に位置するので、調整等必要ではない」と記している。

南海トラフ地震や首都直下型地震などの大災害が近い将来に発生すると予測されている。国民の生命や安全を守るため機動的に対処するには、憲法を改正して私権制限も可能とする緊急事態条項を創設することが急がれる。

また16面の「参院選勝利で政治の安定を図る」というインタビュー記事で、松山政司参院幹事長が「わが党は合区導入直後から各都道府県から選挙ごとに少なくとも一人の参院議員を選ぶことができるように憲法改正を訴えてきましたが、実現できておりません」と述べている。

合区が導入されたのは「投票価値の平等」を確保するためだ。確かに「1票の格差」の是正は必要だが、合区によって地方の声が政治に反映されにくくなることが懸念される。松山氏は「人口という数字だけで選挙制度を決め、有権者を遠ざけるようなことがあれば、議会制民主主義の根幹を揺るがしかねません」と強調している。

合区を解消するには、各州に議員を割り当てる米上院のような仕組みを導入することも一案だ。いずれにせよ、改憲は避けられない。

参院を巡っては選挙制度とともに、衆院との役割分担に関する議論も求められよう。参院は「衆院のカーボンコピー」と言われて久しい。本来、参院の位置付けは長期的な視野で政策を議論する「良識の府」というものだが、現状は衆院と同様に政局の舞台となっている。衆参両院の役割についても憲法に明記する必要があろう。

このほか、日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、日本の防衛政策を過度に抑制的なものとしている憲法9条の改正も喫緊の課題だ。

昨年10月の衆院選で与党は過半数割れとなり、自民、公明両党、日本維新の会、国民民主党などの「改憲勢力」の議席は、国会発議に必要な310議席を下回った。しかし、改憲の必要性が低下したわけではない。「党是」の改憲に向け、自民党は議論を主導できるか。石破氏の決意と指導力が問われよう。(宮田陽一郎)

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