トップオピニオンメディアウォッチ【経済誌】中国の“光”と“闇”そして闇の危うさを分析する週刊エコノミスト

【経済誌】中国の“光”と“闇”そして闇の危うさを分析する週刊エコノミスト

うす暗い牢屋のイメージ
うす暗い牢屋のイメージ

2025年を迎えてもなお、中国を取り巻く情勢が内外共に騒々しい。国内的には不動産バブルの崩壊が依然として中国経済に暗い影を落としている。共産主義政権下での市場経済導入による貧富の格差拡大が続く。国外的には台湾への軍事圧力、南沙諸島や東シナ海での覇権行動など緊張関係は今でも続く。一方、米国では47代目のトランプ大統領が誕生し、早くも米中対立激化の様相が顕在化し始める。果たして、今年の中国の動向はいかなるものか。

そうした中で、週刊エコノミスト(1月14・21日合併号)が中国に焦点を当てた。「中国 動乱前夜」と題する特集。物騒な見出しだが、経済・産業・社会の分野から分析する。内容を見ると、現在中国が強さを発揮している先端技術分野を取り上げる一方で、国内に抱えるいわゆる“闇の部分”を浮き彫りにしている。

このうち先端技術分野ではまず、宇宙開発の発展を挙げた。「22年には独自の宇宙ステーションを建造し、常時3人以上の宇宙飛行士が滞在して実験などを行っている。…30年までに宇宙飛行士を月に送り込むことを表明しており、そのための超大型ロケットや新型宇宙船の開発が進んでいる」(鳥嶋真也・宇宙開発評論家)とし、「近年では米国に伍する宇宙開発を展開しつつある」(同)と評価。

また、半導体産業では、「巨大な国内市場の需要を背景に、製造装置・材料の国産化が進展、世界と肩を並べる実力をつけている」(武野泰彦・グローバルネット代表取締役)とレベルの高さを述べ、「先端産業である半導体産業のクラスター化(集団化)が進み、巨大な龍に変貌する兆候が感じられる」(同)と言い切る。

この他に、世界の54%のシェアを占めるEV(電気自動車)車載リチウム電池の生産やSDV(自動運転や人工知能などのソフトウエアと連動したクルマ)化を進めるEVの生産・開発、さらに東南アジアへの進出を睨(にら)んだ海外戦略を紹介。

加えて軍事分野と連携した高速増殖炉の開発研究など、中国の国際戦略の柱として始まった国際経済圏構想「一帯一路」を絡めて、中国の“光”の部分を強調する。

相次ぐ社会報復殺人

その一方で、同誌は現在中国が抱える“闇”の部分を取り上げた。中国が抱える課題として、内憂(国内問題)としては、①不動産市場の混迷②地方財政の悪化③少子高齢化の進展④高まる社会不安―を挙げ、外患(外交問題)では、①トランプ米政権の対中圧力②台湾を巡る国際緊張③ウクライナと争うロシアとの関係④サプライチェーンの脱中国化―を挙げる。

この中でも近年目立つのが社会不安を増長させる無差別殺人事件。24年3月から11月まで中国国内で起きた社会報復性殺人事件(社会に対する恨みに起因した殺人事件)がざっと見ただけでも22件起きている。

こうした相次ぐ無差別殺人の要因として、エコノミストは8年間中国に暮らしたことのあるジャーナリストの福島香織さんを登場させ、「中国人はしばしば、“情緒感染”ともいうべき集団ヒステリー、集団パニックを起こしやすい。これは反日デモなどの現場をみればよくわかる」と語り、どうしたら防げるかという問いには「中国共産党統治が終わるしかないと答えるしかないのだ」と結論付けている。

まさに「動乱前夜」か

そもそも、共産党政権下での西側の市場経済導入には無理がある。自由主義経済は国家主導の経済体制ではないため、景気の上昇・後退は必然のこと。経済政策を失敗すれば政権は即座に国民の審判を受けることになる。ところが、共産党政権下では一党独裁で交代することがなく、密告と監視が強まれば強まるほど市民の鬱積(うっせき)は膨らんでいく。

ましてや今後、トランプ米大統領との軋轢(あつれき)が強まり、中国経済の落ち込みが顕著になれば国民の政府に対する不満は膨らみ、暴徒化する可能性は高まってくる。そういう意味では、同誌が見出しに付けたように「動乱前夜」はあながち外れてはいないかもしれない。(湯朝 肇)

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