トップオピニオンメディアウォッチ新年の経済社説で「成長型」への飛躍で意識変革、積極投資促す読売

新年の経済社説で「成長型」への飛躍で意識変革、積極投資促す読売

成長重視の保守系紙

4日付産経「新たな成長産業の創出を/賃上げ継続で好循環目指せ」、本紙「賃上げ加速で好循環実現を」、5日付朝日「経済と企業統治/健全な成長の形再構築を」、10日付読売「『成長型』への飛躍果たしたい/長期停滞の打破で家計に恩恵を」、13日付毎日「人口減少下の雇用/働き手の力生かす社会に」――。

新年の日本経済についての各紙社説見出しである。日経は貿易や企業など個別テーマのみ。東京はなし。

掲載した各紙はいずれも通常2本建てのスペースに1本だけの大社説。内容的には列挙した通り、保守系紙の産経や読売が、成長を重視した前向きな視点なのに対し、リベラル系の朝日、毎日は「人への投資」や「公正な分配」といった分配に重きを置き、これまでの低賃金・消費低迷の原因を究明するものとなった。

新年初めとしては、やはり、前向きな保守系紙の社説の方が気分が良く、課題克服へも前向きに臨めるのではないか。

例えば、「日本経済が再生に向け正念場を迎えている」とした産経。同紙はその象徴として、自動車大手のホンダと日産自動車による経営統合交渉を挙げた。

大胆な戦略の実行を

バブル崩壊後の「失われた30年」でも世界的な競争力を維持して日本経済を牽引(けんいん)してきた自動車産業が、今、「100年に1度」と言われる大変革期を迎え、日本車の優位性が相対的に低下している。「これまでの成功体験にとらわれることなく、大変革期を乗り切る大胆な戦略を描き実行に移してほしい」というわけである。

ただ、同紙は「問題は、自動車に続く成長産業が見当たらないことだ」とし、「日本経済の再生には新たな成長産業の創出が不可欠だ」と強調する。もっとも、そうは言いながらも、同紙が期待するのは、最先端半導体の国産化を目指し、政府も支援する「ラピダス」である。

読売も産経と同様、日本が高い賃金と活発な投資が主導する「成長型経済」に着実に移行し、デフレから完全に脱却できるか、「今年は真価が問われる年になる」とする。

それでも、同紙は産経より楽観的で「日本企業の潜在力は高いはずだ」として、「リスクを回避するばかりでなく、大胆な成長戦略へと踏み出していってもらいたい」と企業にエールを送る。企業の内部留保は昨年度末に過去最高の約600兆円に達し、資金を積極的に投資へと回していない。同紙は「今こそ、内部留保を活用し、攻めの姿勢に転じる時だろう」と強調するが、同感である。

そして、「日本企業が新たな時代を切り開き、リードしていくことを期待されている分野は少なくない」として同紙が挙げるのが、NTTが進める電力消費が大幅に少ない次世代通信基盤の実用化や、三菱重工業が優位に立っている二酸化炭素を回収する技術など。量子コンピューターの開発もそうである。

公正な分配問う朝日

政府に対しては、将来有望な分野を見定めて、集中的な資金支援などの強化をしてもらいたい、としたが、これまたその通りである。

朝日が問う「健全な成長の形」とは、「働き手が貢献に応じた」分配を受けていることである。しかし、バブル崩壊後、財務体質強化優先、最近では株主最優先の経営でも企業活動の成果が公正に分配されず、「賃金は四半世紀にわたって伸び悩み、一定の賃上げが実現したのはここ2年に過ぎない」と朝日。

しかし、同紙が言う通り、ここ2年で変わった。それでも、食料品など生活必需品の価格が上昇し、家計は苦しい。暮らしを豊かにしていくためには、「生産性を高めて、国内総生産(GDP)を伸ばし、分配のパイ自体を増やしていく必要がある」(読売)。成長の視点が大事であり、そうした視点が朝日、毎日にはない。保守系3紙が主張するように、高い賃上げを続ける必要があるということである。

(床井明男)

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »