
影響は避けられない
テレビ業界に激震が走っている。中でもフジテレビ幹部は正月を迎える気分じゃないだろう。年末に露見した“国民的MC”の中居正広氏(52)の女性トラブルで、年始の特別番組や彼出演のレギュラー番組への影響は避けようがない。
加えて、トラブルへの組織的関与も指摘されているのだから大ごとだ。たとえそれが否定されたとしても、トラブルを把握した時点で何ら対応を取らなかったとすれば会社の責任は免れまい。電波は公共財だし、報道機関の役割を担うテレビ局はコンプライアンス順守はもとより、一般企業よりも高い倫理基準が求められるのである。
中居氏のタレント生命の危機が指摘される事態は、週刊「女性セブン」(12月19日発売)の記事がきっかけで表面化した。その後、「週刊文春」が後追い記事を掲載したことで、有力ユーチューブチャンネルやX(旧ツイッター)をはじめとしたSNSではこの問題で大騒ぎとなっている。
週刊誌2誌の記事やネット情報を総合すると、トラブル発生は中居氏が病気休養から復帰した後の2023年6月。フジテレビの幹部社員A氏が中居氏、「芸能関係」の女性と3人での飲み会をセッティングした。女性は気乗りしなかったが、仕事のポジションで上となるA氏からの誘いを断ることができなかったという。
女性はPTSD発症
ところが、直前になって、A氏が参加をキャンセル。結局、中居氏と女性は密室で2人だけで飲み会を行うことになり、そこで深刻なトラブルが発生した。飲み会は多人数の予定で、女性以外の全員が一斉キャンセルしたという説もある。また女性について、ネットにはフジテレビの元アナウンサー(実名も出ている)との情報もあるが、いずれにしてもA氏が関与したという点では一致している。
その後、女性は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し入院。中居氏側と交渉した結果、同氏が和解金を支払うとともに、お互いトラブルについて口外しないという守秘義務を負うことで示談が成立した。
トラブルがいかに重大であったのかを暗示しているのが、中居氏が支払ったと言われる解決金「9000万円」。男女関係のトラブルで支払われる示談金としては巨額であり、複数の弁護士はユーチューブチャンネルで、犯罪性の高いトラブルが発生していた可能性を指摘している。
大騒ぎとなったことから、中居氏は27日、有料会員向けサイトに謝罪文を掲載するとともに、「今向き合わなければならないことを真摯(しんし)に、懸命に取り組んでおります」と、トラブルがあったことを認めた。
一方、フジテレビも同日、ホームページで「一部週刊誌等における弊社社員に関する報道について」と題した見解を発表。指摘された幹部社員の関与を「内容については事実でないことが含まれており、記事中にある食事会に関しても、当該社員は会の設定を含め一切関与しておりません」と否定した。
複数の被害者を示唆
だが、被害に遭った女性は守秘義務があるので具体的なことには言及しないが「なぜ今までフジは、Aさんのやっていることを止めてこなかったのか。見て見ぬふりしてきたのか。私と同じような被害に遭っている子がいます」(「週刊文春」)と、“被害者”が複数存在することを示唆している。
会社の利益につながる人物との会食に女性アナウンサーなどを同席させることについて、ネット上には、同社の元男性アナウンサーが実名で「何十年も前から行われてきた」と認める発言内容が流れている。今後、同様の被害を訴える女性が名乗り出れば、フジテレビは窮地に追い込まれるだけでなく、他局も無関係ではなくなる。華やかな業界の裏で、社員や仕事上関係のある女性を“接待要員”にしてきたとすれば、テレビ各局は新年早々から、業界の宿痾(しゅくあ)に真摯に向き合うことを迫られるだろう。
(森田清策)