憲法審、拉致問題に言及なし
10月に投開票された衆院選の結果、与党が過半数割れとなり、今月24日に閉幕した臨時国会では厳しい政権運営を迫られた。衆院選で50議席を増やした立憲民主党は、毎月発行する機関紙「立憲民主」12月20日号に野田佳彦代表のインタビューを掲載し、今後の見通しなどを聞いている。(インタビューは11月19日)
野田氏は衆院選を振り返り、「いわゆる裏金議員と言われる大物議員の選挙区を対象に幹部が手分けをして遊説を行い、争点化に成功した」と評価した。一方で、国民民主党やれいわ新選組が比例票を伸ばす中、立民が1156万票と横ばいに終わったことについて「政治とカネの問題に焦点を当てましたが、政権を取った後のイメージなど、もっとメッセージを発信すべきであった」と反省を語っている。
国民民主とれいわは、方向性は違えど政策を前面に押し出し、若者を中心に支持を伸ばした。特に国民民主は、出口調査の結果を見ると20、30代から最も支持された政党になっている。比例得票数からも、若者を中心に多くの国民が、政権交代か否かの二者択一ではなく、政策の中身を判断材料にして投票していると言える。
来年夏の参院選では、立民にもより具体的な政策を訴える選挙戦を期待したい。ただ、インタビューの中で野田氏は、参院選に向けた取り組みとして全国に32ある1人区を「きちんと野党間で一本化していく」ことを真っ先に挙げている。政権交代をかなえるには最適の選択肢かもしれないが、国民に政策を示す点ではどうだろうか。野党間では憲法や安全保障など国の根幹に関わる政策でも隔たりが大きく、選挙戦で「政権交代か否か」以外に何をアピールできるのか不明確だ。
衆院選で比例票が国民民主を下回った日本維新の会の吉村洋文代表は、野党で予備選を行い、勝ち残った候補によって与野党一騎打ちの構図をつくる案を提示する。具体的な方法は来年1月召集の通常国会までに検討するということだが、有権者の意見を反映できるか、分かりやすくオープンな形で実施できるかが大きな課題だ。立民は今のところ同案を否定していないが、れいわの山本太郎代表は「寝言は寝て言え」と突っぱねている。有権者からしても、選択肢が狭まるという点で野党共闘の一本化と変わりないのが現実だ。
また野田氏はインタビューの中で、国会運営における委員長ポストにも言及している。衆院選の結果を受け、立民は衆議院で常任委員長を五つ、特別委員長を三つ、審査会長を一つ務めることになった。野田氏はこの中でも特に予算委員長、法務委員長、政治改革に関する特別委員長を挙げ、政治改革や選択的夫婦別姓の議論について「主導権を握ることができる」とアピールした。
立民が取った委員長ポストは他にも憲法審査会会長、北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員長などがある。特にこの二つの委員長に言及がなかったのは残念だ。憲法審についてはこれまでも「論憲」を掲げて改憲論議をかわしてきた分あまり期待できないが、拉致問題には何か言及がほしかった。
今月19日に開いた党拉致問題対策本部では家族会の横田哲也事務局次長から「自民党政治ではできなかったことに取り組んでほしい」と要望を受けている。拉致被害者の家族も高齢化しており、拉致問題はタイムリミットのある課題だ。その思いにどう応えるか注目したい。
(亀井 玲那)