2度の打ち上げ失敗
20日付読売「開発初期には不可避の試練」、22日付産経「足元固め万全の再挑戦を」、23日付日経「民間ロケット失敗の検証を」、24日付朝日「厳しい試練と現実と」――。
宇宙開発ベンチャーのスペースワンが小型ロケット「カイロス」2号機を打ち上げ、初号機に続き失敗したことを受けて、論評を掲載した4紙(保守系3紙、リベラル系1紙)の社説見出しである。
列挙した通り、読売は新ロケットの開発では「初期段階での打ち上げ失敗はつきものだ」「2度の失敗にくじけることなく、原因を究明し、次に挑んでもらいたい」などとして再挑戦を鼓舞した。
産経も読売と同様、「2回連続の失敗でも決して萎縮する必要はない」としながらも、「だが結果は謙虚に受け入れるべきだろう」として、「原因を解明して再発を防止するとともに、他にも不具合がないか徹底的に点検すべきだ」と説く。その通りだろう。
読売が「同時に、スピード感も大切である」として、小型衛星を素早く打ち上げる「宇宙宅配便」を目指すスペースワンへ「少しでも早く市場に参入し、アジアなど内外の顧客を開拓しなければならない」と注文したのに対し、産経は「早期の参入には開発のスピード感が大切だ」と認めながらも、「不十分な検証でさらなる失敗を繰り返せば本末転倒である」と強調する。
社長の姿勢に疑問も
2回連続の失敗に対し「開発体制を総点検し、立て直す必要がある」とし、「一定の時間がかかったとしても万全の構えで再挑戦してほしい」「大きく飛躍するには足元をしっかり固めることが肝要だ」というわけで、やや楽観的な読売との違いを見せた。
産経と同様、「原因究明の徹底はもちろん、開発・管理体制も含めて幅広い視野で問題点を検証すべきだ」としたのが日経である。
日経は、3月の初号機が発射直後に爆発したのに比べ、2号機は宇宙空間にまで達し「失敗ではなく次への糧」とした豊田正和社長に対し、「もっと重く受け止めるべきだろう」と叱責。さらに、「同社の姿勢には疑問もある」とする。
2号機には台湾の宇宙機関や民間企業などの衛星5基が搭載されており、打ち上げは衛星を切り離す高度にロケットを到達させる必要がある。「それを達成するまでは、試験的な打ち上げでよいのではないか」というわけで、一理ある。
わが国の基幹ロケットH3でさえ、初号機の打ち上げ失敗で2号機では衛星を搭載できず、ダミー衛星を積んでの打ち上げを余儀なくされた。2号機の成功により、3号機で先進レーダー衛星「だいち4号」を搭載しての打ち上げ成功となった。
もちろん、豊田社長にもそれなりの成功への自信があった上でのことであろうが、同紙が指摘するように、「ロケット開発の難しさを改めて突きつけた形だ」(日経)。
安全保障上も問題だ
リベラル系では1紙のみの朝日。同紙も、初号機の失敗から約9カ月で2回目の打ち上げにこぎ着けたが、「ロケット開発の難しさを思い知らされる」と指摘。当初は2020年代半ばに年間20回の打ち上げを目指していたが、遅れは避けられそうになく、「いかに早く次の挑戦につなげられるかがカギとなる」とする。
朝日の打ち上げに関する直接の論評はこれだけで、あとは今年度から運用が始まった、企業や大学の技術開発を最大10年間にわたって支援する「宇宙戦略基金」について、総額1兆円を目指すという破格なもので、「規模や使い道が適正なのかは、関係省庁のもとで不断の検証が欠かせない」と、話が少し横道にそれてしまうのである。
各紙が指摘するが、カイロスと同様の固体燃料方式では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進める「イプシロンS」も地上のエンジン燃焼試験で2度の爆発事故を起こし見通しが立っていないのは、安全保障上でも問題で残念である。
(床井明男)