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テロリストの主張に同調するかのようなメディアと政治が生んだ脅迫

人のいない教室のイメージ(Unsplash)
人のいない教室のイメージ(Unsplash)

殺害ほのめかす文書

「教育者として、強い使命感・倫理観と、子どもへの深い教育的愛情を、常に持ち続ける教員」―。これが北海道における「求める教員像」という(同教育委員会)。それがどうだろう、道立北海道雄武高校の65歳男性教員が「ひげの隊長」として知られる佐藤正久参院議員(自民党)に対し、殺害をほのめかす文書を送って警視庁に脅迫容疑で逮捕された。(本紙3日付)

差出人として実在する自民党道議の名前をかたり、文面には「あなたは落ちこぼれの自衛隊野郎ですが、わが教祖山上徹也大先生に銃の作り方や撃ち方を教えた」「おかげで安倍晋三を倒すことができました。今度はあなたの番です」などとあった。調べに対し教員は「佐藤議員の言動が日本国憲法や基本的人権をないがしろにしていると立腹していた」と容疑を認めている。

脅迫という、自らは基本的人権をないがしろにしておきながら人権を振りかざし「正義」を装う。これこそ安倍元首相銃撃事件以来、テロリストの主張に同調するかのごとき論調を張ってきた「メディアの産物」ではないか。

ところが(案の定と言うべきか)、同事件の各紙扱いがやけに小さい。本紙は社会面3段見出しだが、読売、毎日、産経、朝日そろって1段見出しのベタ記事だ(いずれも3日付)。朝日に至っては地域面(首都圏)で済ませている。

これだから大手紙は信頼されない。2022年の銃撃事件後、自民党の細野豪志衆院議員はこう警鐘を鳴らしていた。「メディアはもっと危機感を持ち、暴力的な手段は許さないと主張すべき局面だと思う。SNS(交流サイト)でキーワード検索すると加害者について『英雄』『救世主』という言葉が出てくる。…加害者が半ば被害者のように言われる状況は倒錯だ」(産経ネット版=同11月8日付)

岸田氏の瑕疵も問え

だが、メディアの倒錯は続き、加害者は「わが教組」「大先生」だ。いったい新聞はいつまで沈黙するのか、そう思っていると唯一、産経が7日付主張で「背景にはテロへの容認がある」と声を挙げた。

「(今回の脅迫は)テロの肯定や賛美という誤った言説に影響を受けた可能性が高い。…テロ対処の要諦は、テロリストの主張に耳を傾けないことである。この点で安倍氏銃撃事件への社会の反応には大きな瑕疵があった」と。

瑕疵(かし)とは本来あるべき要件や性質が欠けていることを指す。つまりテロ対策失敗である。産経主張は「ネット空間に氾濫する『氏ね』『シネバ』といった罵詈、中傷の数々がハードルを下げてはいないか。『保育園落ちた日本死ね』といった書き込みを『魂の叫び』と多くのメディアがもてはやした過去もある。…悪しき風潮を止める手立てを社会全体で考えたい」としている。

それもそうだが、瑕疵を言うなら当時の岸田文雄首相も問うべきではないか。反テロ・メッセージをほとんど発せず、加害者の主張に同調するかのような教団対策に終始した。政治とメディアが「結託」すれば何が起こるのか。この教訓こそ探るべきだ。

脱北教組勧めた道義

ところで、脅迫犯の教師が脅迫状の差出人で名乗ったのは藤沢澄雄道議である。なぜ藤沢氏なのか、不思議に思ってネットを見ると、「北教組みんなで抜ければ怖くない」(2012年12月14日)とのブログがあった。北教組とは北海道教職員組合のことだ。

「公務員の労働組合ってのは、本当に本当にしょーもない。古くは国労。現在では一に日教組、二に自治労。まぁ、ホントにひどいですね。上に行けば行くほどに、社会一般の常識がまるで通じませんから。執行部に至っては完全な社会・共産主義者。公僕が国家の転覆を企んでいるのは、誰がどう考えたって、ただただ異常ですよね」

藤沢氏は「脱北(北教組)」を勧めていた。脅迫犯がこれに反発して名をかたったなら思想的背景も問うべきではないか。そこのところもメディアは抜け落ちている。

(増 記代司)

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