7紙がそろって批判
先月23日付読売「惰性でバラマキを続けるのか」、朝日「またも『規模ありき』か」、日経「これほど巨額の経済対策は必要なのか」、毎日「生活底上げにつながるか」、東京「予算の無駄は許さない」、24日付産経「成長に資する効果みえぬ」、26日付本紙「物価高対策にもっと厚みを」――。
政府が先月22日に決定した総合経済対策に対する各紙社説の見出しで、対策の裏付けとなる2024年度補正予算案の一般歳出規模は約13兆9000億円である。
在京7紙がそろって批判の論調を掲げるのは、岸田前政権の定額減税以来か。
それにしても、列挙した通り、批判のオンパレードである。その内容は規模と中身の双方についてで、「政策効果を吟味せず、規模ありきで歳出を膨らませたと言わざるを得ない」(読売など)ということで、そうした結果になったのも、石破茂首相が先の衆院選の期間中に、前年度を上回る規模にすると言及したから、というわけである。
日本経済はコロナ禍の影響も薄れ、緩やかに回復を続ける中、政府自ら、昨年6月に、歳出構造を「平時に戻していく」との方針を決めているから、今回の規模を批判するのも道理である。
線引きの工夫が必要
中身について、特に各紙が問題視するのは、物価高対策として実施する住民税非課税世帯への3万円給付だ。
同世帯は65歳以上の世帯が大半を占め、金融資産が多い高齢者にも恩恵が及ぶ。「むしろ現役世代への支援を手厚くすべきだとの声も根強い」(読売)、「対象外でも、低賃金で困窮する非正規労働者は多い」(毎日)ということで、産経が指摘するように、「真に支援が必要な世帯を支えているかどうかを見極めるべきだろう」とするのも尤(もっと)もで、適切な線引きの工夫が必要だろう。
各紙がさらに強く批判するのは、物価高対策のもう一つの柱、電気・ガス代補助の再開やガソリン補助の延長についてである。
これらの補助制度は既に総額11兆円を超える予算が充てられており、読売は「財政を圧迫するだけではなく脱炭素の流れにも逆行しよう」と指摘、朝日も同様である。
とりわけ日経は「市場の価格形成をゆがめ、脱炭素にも逆行する政策をだらだらと続けるのには賛成できない」と強調。産経も「だらだらと続けるだけではこの先の展望も開けない」とまで言う。
ただ、回復しているとはいえ、日本経済に依然力強さが見られない中、そうした施策がなくてよいのかどうか。
高賃上げで低迷なぜ
7~9月期の実質国内総生産(GDP)は年率0・9%増と2期連続の成長となったが、読売や日経が社説で指摘したように、認証不正による生産停止の影響が縮小した自動車購入が伸びたといった一時的要因があった上での成長率であり、そうした要因を除けば、どんな具合だろう。
23、24年と春闘で大幅な賃上げを実現したにもかかわらず、消費に力強さがない。賃上げ以上に物価高が上回り、消費ひいては成長の重しになっているからである。この点を懸念し、本紙は逆に支援に厚みをとした。
逆に言えば、政府のガソリン代や電気・ガス代補助の延長・再開が成長を下支えしているわけである。「成長に資する効果みえぬ」(産経見出し)ことはないと言える。読売や日経などにもそうした視点がないのは残念である。
もちろん、読売などが指摘するように、日本経済を強化していくためには、脱炭素やデジタル化といった重要分野に資金を活用していくことは大切だろう。
ただ、朝日が言うように、財政法は補正の対象を「特に緊要となった経費」と定めていることから、そうした施策は中長期的な政策であり、「本来、当初予算の中で手法や規模、財源を吟味し、必要性や効果の高いものを厳選すべき」であろう。
(床井明男)