各党紙面 衆院選受け
第50回衆院選が先月27日、投開票された。自民党は2009年以来15年ぶりの単独過半数割れ、公明党も公示前から8議席減らし、石破茂首相が設定した「与党で過半数」の勝敗ラインを下回った。その一方で、立憲民主党は大幅に議席を増やし、国民民主党も躍進した。
その後、今月11日に特別国会が召集され、衆院本会議で首相指名選挙が行われるまで、立民は「野田佳彦首相」誕生を目指し国民、日本維新の会の両党に働き掛けるなどの動きを見せた。結局は基本政策の不一致などから両党は野田氏への投票に応じず、石破氏が指名されたが、1994年以来30年ぶりで戦後5回目の決選投票が行われた。自民にとって久々に緊張感の走る局面になったのではないだろうか。
選挙結果を受け、各党の政党機関紙はそれぞれの受け止めを記事にした。自民機関紙「自由民主」は、11月5日号1面に「国民の審判 謙虚に受け止める」との記事を掲載した。同時に「191議席を獲得 比較第一党を維持」とも強調。「政治の停滞は許されず」「比較第一党の責任を果たす」と訴え、来る首相指名選挙に向け、引き続き自民が政権を担うことへの決意を表明した。
公明の日刊機関紙「公明新聞」は10月28日付で「公明、逆風突き健闘」と大きく載せ、最もショックが大きかったであろう石井啓一代表(当時)の落選については「石井代表ら惜敗」と小さく見出しにした。翌29日の紙面には「24議席で再出発」とし、「誠に残念な結果」「逆風をハネ返す党自身の力量が足りなかったと言わざるを得ません」と振り返る党声明を掲載した。
立共、再び近づく距離感
立民の機関紙「立憲民主」11月15日号(発送は国会召集前)も、「政権交代であなたのくらしを豊かに」と、首相指名選挙を見据え見出しでアピールした。他にも、「与党過半数割れに追い込む」と成果を強調した。隔月で発行する国民機関紙「国民民主PRESS」は、11月15日発行の号外で「議席4倍増を達成!」と選挙結果について報告したが、それよりも先に11日に実施した自民との党首会談の記事を載せ、「国民民主党、政策実現に向けて前進」と強調した。
また共産機関紙「しんぶん赤旗」は、10月28日付1面には「田村委員長、衆院初当選 共産5議席」との見出しで記事を載せた。赤旗は選挙期間中、自民が裏金問題で非公認になった候補が代表となっている党支部にも2000万円を支給していたと報じた。同29日付3面ではこのスクープの影響を振り返る記事を載せ、「与党過半数割れ”MVP”」「自民閣僚経験者『赤旗にやられた』」との見出しで自賛した。
立民が首相指名選挙への協力を各党に求めた際、真っ先に応じたのが共産党だった。10月30日に党首会談を行い、田村智子委員長が協力について「前向きに検討する」と答えた。赤旗によるとこの際、立民の小川淳也幹事長から「スクープへの感謝が表明」されたという。
党代表選の時点で共産と距離を置く姿勢を示していた野田氏と、その安全保障政策に反発した共産との間では、衆院選でも多くの選挙区で候補が競合するなど距離感が開いていた。しかし、政権交代の可能性を前に政策の相違にもかかわらず再接近し始めた。
今回の選挙で躍進した国民は、「手取りを増やす」という政策を中心に有権者への訴えを続けた結果、若者、現役世代から支持を得た。政治家が思う以上に有権者は「政策」を見ている。政策が相いれないと言いながら政局のため協力する姿勢はどう映るだろうか。
(亀井 玲那)