Homeオピニオンメディアウォッチ兵庫県知事選 「告発はクーデター」説バズり“パワハラ知事”斎藤元彦氏、逆転か

兵庫県知事選 「告発はクーデター」説バズり“パワハラ知事”斎藤元彦氏、逆転か

トップの候補を猛追

地方自治体の首長選挙でこんな事態はかつてあったろうか。17日投開票の兵庫県知事選挙。“パワハラ・おねだり知事”と、テレビ・新聞で批判された上、議会からは不信任決議を突き付けられて失職した斎藤元彦候補。実は、既得権益にしがみ付く勢力によるクーデター計画の被害者だったと示唆する情報がインターネットで拡散。その結果、候補者7人のうち、世論調査でトップに立つ稲村和美候補(前尼崎市長)を猛追し逆転勝利の可能性が高まっている。

関連サイト 兵庫県選挙管理委員会 兵庫県知事選挙・兵庫県議会議員補欠選挙(尼崎市・明石市)

まずは時系列で騒動を振り返る。今年春、ある県民局長が斎藤氏のパワハラ・おねだりを告発する文書を報道機関などに送り、その後、「公益通報」窓口に提出した。県議会は百条委員会を設置したが、渦中の人物は7月、自ら命を絶った。

告発文書を「事実ではない」として懲戒処分にしたことが県民局長を死に追いやったとして、斎藤氏は非難の矢面に立たされた。責任を問われても表情を変えず耐える姿をテレビで見た時、「鋼のメンタル」を持つ人物なのか、それともマスコミが報じない“隠された真実”があるのか、と筆者は訝(いぶか)った。しかし、東京にいては分からない。

四面楚歌(そか)の状況でも知事選に再出馬した斎藤氏の思いをある程度推測できるようになったのは、知事選に立花孝志氏(「NHKから国民を守る党」党首)が立候補したことが大きい。立花氏は政見放送でこんなことを主張した。

「本来、犯罪・名誉毀損(きそん)罪になる行為がなぜか内部告発に変身してしまっている。騒動は、自殺された県民局長が兵庫県や知事のありもしないことをでっち上げて、メディアがそれをさも本当のことのように取り上げたことで、噂(うわさ)話が本当のことのように広まった」

音声データの公開も

衝撃的な発言もあった。「(県民局長は)10年間にわたって女性県庁職員10人と不倫していた。それがばらされることが嫌で自殺したと考えるのが普通ですよ……前知事は守秘義務があるから、誰かが真実を伝えないといけない。そう思って立候補している」。こうして立花氏は得た情報をネットで公開したことで、斎藤氏に対する県民の評価が一転したというわけだ。

県民局長の不倫はたとえ事実であっても死者の名誉を傷つけるから、テレビ・新聞は報道しづらい。斎藤氏=悪者、県民局長=被害者という構図で報道してきた手前、今さら自分たちの間違いを認める報道はできないという思いもあるだろう。

まだ立花氏の発言をすべて真実とすることはできないが、彼の発言を裏付ける音声データがSNSにアップされている。百条委員会の在り方に疑問を持つ県議から入手したという。そこでは、斎藤氏の側近だった片山安孝前副知事が百条委員会で証人尋問を受ける様子が録音されていた。

「公用パソコンの中にあった資料のうちクーデター、斎藤県政を転覆させる資料が2種類ある」と説明しながら、斎藤氏を陥れるためのビラや同氏の側近グループを排除した後の人事案もあったという。それが本当なら、県民局長が告発文書を外部に配布した目的は斎藤県政の前、20年続いた井戸敏三県政でつくられた権益構造にメスを入れ始めた斎藤氏を追い落とすためだったという疑いが強まる。そればかりではない。

「(県民局長の公的パソコンに)倫理上問題のあるファイルがあった。それは当該本人の『不倫日記』。過去10年間にわたります複数の女性との……」と、片山氏が発言すると、委員長(自民党県会議員)は「証言していただかなくてけっこう。暫時、休憩する」と遮ってしまった。

投票行動が分かれる

告発文書を配布した県民局長はどのような人物だったのか。それは文書の信憑(しんぴょう)性に関わる。だが、確認を避けるとは一体どういうことか。

第三者委員会や百条委員会の報告が出る前に、斎藤氏に落ち度は全くなく、クーデターの被害者と断定するのは早計だが、今、確実に言えることは、選挙における有権者の投票行動はテレビ・新聞しか見ないオールドメディア層と、ユーチューブやX(旧ツイッター)で情報を取るネットメディア層で、大きく分かれるということだ。もし斎藤氏が県政に復帰すれば、オールドメディアが隠した事実をネットメディアが伝え、有権者の投票行動を大きく変えた歴史的な選挙と言われるだろう。

(森田清策)

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