サンモニ出演の学者
江戸時代の文化研究者で法政大学前総長の田中優子氏がネットで大炎上中だ。この名前を聞いただけではピンとこない読者がいるかもしれないが、TBS「サンデーモーニング」(サンモニ)はじめテレビに着物姿でよく登場する学者と説明すれば、「ああ、あの女性か」と思い出してもらえるのではないか。
その田中氏がなぜ炎上したかと言えば、自民党総裁選の決選投票で石破茂氏に敗れた高市早苗氏を「安倍さんが女装して現れた」「だから男でしょう。安倍さんでしょう」と揶揄(やゆ)し、保守系のユーチューブチャンネルやX(旧ツイッター)で「女性差別だ」と、非難の嵐となったのだ。
学者らしからぬ“とんでも発言”が飛び出したのは、衆院選公示前の今月13日、場所は東京都八王子市内。立憲民主党候補予定者の支援集会に駆け付け、壇上で堂々と公言した。ネット時代になると、恐ろしいもので、その動画はXなどですぐ拡散する。
それを見ると、まず司会とみられる女性がこんな愚痴をこぼした。石破氏でも最悪だが、総裁選で勝ったのが高市氏でなく良かったと書くと、女性活躍やジェンダー平等と言っているのになぜ高市氏を応援しないのかとネットで叩(たた)かれる、と。その上で、そう批判されたら「どう返すか聞きたい」と田中氏に水を向けた。それに対して、次のように語っている。
「男でしょう」と侮蔑
「私も同じだったの、あ、まずいと。しかも日本の歴史に残るわけですね、日本で最初の女性の首相、この人だって。ちょっと恥ずかしいでしょ。だから、石破さんになって、私もホッとした。なぜかと言うと、……(高市氏は)自民党議員の中でも安倍派ですよね、つまり私が表現したいのは、安倍さんが女装して現れた、安倍さんそのものです、あの人が言っていることは(会場から笑いが出る)。だから女性がどういう歴史を歩んできて、どんな目に遭って生きてきて、政治はそれに対して何をしなければならないかと一度も考えたことがないと思う。だから、男でしょう。安倍さんでしょう」
保守派の高市氏とは思想・信条が違うから「支持できない」と言えばいいだけのことを、安倍晋三元首相と関係付け、事もあろうに“女装した安倍さん”とは、開いた口がふさがらない。こんな差別発言は、自分を“着物姿のアベガー”に貶(おとし)めるだけだと気付かないのが不思議である。
また、女性を「男でしょう」と侮蔑するのはLGBT差別にもつながる。しかも、高市氏は安倍氏に近かったとしても無派閥。それを「安倍派」にしてしまうのはアバウト過ぎる。
これじゃあ、炎上しないわけがない。有名どころのXポストを紹介する。「これはあかんやろ。森喜朗さんを叩きに叩きまくってた人たちは、この発言スルーするの?」と、田中氏だけでなく彼女を批判しないマスコミなどにも矛先を向けたのは、元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏。森喜朗元首相は東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長当時、「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」と発言したことが、女性差別だとバッシングされて会長を辞任した。
青木氏は出演を辞退
女性からの厳しいポストもある。「自分の希望に沿わない女性政治家を『中身は男』と非難するのは、性差別です。しかも属性で人を貶めて笑いを取るのは、いじめの構造と同じです。フェミニストあるあるですけど、これを機にやめましょう」。これは元衆院議員で弁護士の菅野志桜里氏だ。フェミニストやいわゆる「意識高い系」には自分と違う考えを持つ人を見下す独善的な人間が少なくないが、田中氏もその悪い習性を持っていたようだ。
さて、田中氏は今後、批判にどう対応するのか。これまでのところ、だんまりを決め込んでいる。サンモニのコメンテーターでジャーナリストの青木理氏は「劣等民族」発言で炎上した後、少し経(た)って謝罪・発言撤回し、テレビ出演をしばらく辞退すると表明した。20日放送のサンモニは田中発言をスルーしたが、しばらくして何事もなかったかのように出演したら、田中氏もサンモニもさらなる炎上必至である。
(森田清策)