トップオピニオンメディアウォッチ選択的夫婦別姓「賛成」に巧みに誘導する左派メディアの世論調査

選択的夫婦別姓「賛成」に巧みに誘導する左派メディアの世論調査

選択肢に注意要する

総選挙はいよいよ終盤戦である。メディアが巧妙な世論操作を仕掛けていないか、読者に注意を促したい。勝手に「争点」なるものをつくり上げる。「情勢調査」で勝敗の予測を伝える。それが有権者の心理に微妙に影響を与え、選挙結果を左右するからだ。その一つに選択的夫婦別姓制度を巡る論議がある。

与野党とも賛否は割れているが、導入賛成は概(おおむ)ねリベラル派、反対は保守派で、その是非を巡って有権者の投票行動が変わる可能性がある。メディアは各党の対応と世論調査結果を報じているが、「選択的」という言葉が実に怪しい。

筆者の知り合いの女性看護師はこんなことを言っていた。「職場では結婚前からの名字を使っていますが、戸籍は夫の姓です。これって職場と家庭での選択的夫婦別姓でしょ」。誤解している。現行法では結婚すれば戸籍で姓を一つ(同姓)にするが、それを同姓でも夫婦それぞれ結婚前の姓を選択するのもよい。それが選択的夫婦別姓制で戸籍に関わる。そう話すと彼女は「家族バラバラの選択的なら、ちょっとね」と躊躇(ちゅうちょ)した。

だから世論調査は注意を要する。内閣府が令和3年12月に実施した「家族の法制に関する世論調査」のような3択が望ましい。①現在の制度である夫婦同姓制度を維持する②現在の制度である夫婦同姓制度を維持した上で旧姓の通称使用についての法制度を設ける③選択的夫婦別姓制度を導入する―の3択だ。

平然と2択を続ける

回答を見ると、選択的夫婦別姓制賛成は28・9%で3分の1以下。最も多いのは同姓維持・通称使用制度化の42・2%、現行制度維持も27%で、同姓制維持は7割近い。読売が今年9月に同様の質問を行っているが(同16日付)、別姓制導入は28%に留まり、同姓維持・通称制度導入47%、現行制度維持20%で合わせて67%を占め、内閣府の調査結果とほぼ同じだった。

だから単純に賛否を問うのは誤解を招き、世を惑わすことになる。ところが、左派メディアは平然と2択を続けているのである。その代表が朝日よりも左とされる共同通信だ。10月13日配信の世論調査は、こう質問する。「あなたは、希望する夫婦が結婚後も結婚前の名字を名乗れる『選択的夫婦別姓制度』の導入に賛成ですか、反対ですか」。結果は賛成66・9%、反対22・2%(3択の場合の同姓制度維持派とほぼ同じ)だ。

この設問に異議ありだ。通称使用制度も「結婚後も結婚前の名字を名乗れる」から、通称制導入派がそっくり賛成派に誘導されている。おまけに「希望する」を枕詞(まくらことば)に使えば、拒む人は少ない。これは世論調査では禁じ手の誘導に該当する。ところが、地方紙はこれを真に受けて15日付で一斉に「夫婦別姓 賛成多数」と大きく報じ、高知新聞などは「実現望む声に向き合え」(20日付社説)と気勢を上げている。

違いが不明確な設問

毎日の場合は賛否に「どちらとも言えない」を加えた3択である(9月30日付)。結果は賛成50%、反対28%、どちらとも言えない22%で、賛成が5割まで下がり、導入賛成派と反対・疑問派が拮抗(きっこう)している。毎日が通称使用制度を質問から外し「どちらとも言えない」との曖昧な質問で済ませたのは、賛成派に下駄(げた)を履かせたいからか。

朝日は東大との共同調査で衆院選候補者に「夫婦が望む場合には、結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の名字を称することを、法律で認めるべきだ」の賛否を5択で質問したと胸を張り、自民以外は賛成多数としている(10月19日付)。が、5択といっても賛成と反対の間に「どちらかと言えば」の賛否の濃淡を加えただけで中身は2択と変わらない。設問の「名字を称する」は通称制度との違いが不明で、限りなくインチキ臭い。

左派メディアの世論調査は詐欺師のように言葉巧みに別姓導入へと誘導し投票行動を変えようとしている。まるで票の振り込め詐欺である。

(増 記代司)

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