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「劣等民族」発言の青木理氏が謝罪・出演自粛

説明せぬ「サンモニ」 たこつぼ化で「別世界」

サンデーモーニングを放送しているTBSの放送センター=東京都港区

筆者は「世界日報」9月26日付「メディアウォッチ」欄で、TBS「サンデーモーニング」(サンモニ)のコメンテーターであるジャーナリスト青木理氏がユーチューブ番組で、自民党支持者を「劣等民族」と誹謗し、その後、黙りを決め込んでいる問題を取り上げた(「『劣等民族』発言で大炎上する青木理氏『サンモニ』は起用続けるか」)。この論考はその続報である。

記事が掲載された翌日の27日、劣等民族発言があったユーチューブ番組の冒頭、番組プロデユーサー兼ジャーナリスト津田大介と青木両氏が謝罪し、発言した当人は発言を撤回した。

津田氏は左派の政治活動家として知られる。5年前、昭和天皇の肖像写真を燃やしその灰を踏み付ける動画や、慰安婦を象徴する少女像などを展示して批判を浴びたことは記憶に新しい。青木氏の劣等民族発言に対しては、咎めることもなく、2人で笑ったことから、ネット上では、津田氏も批判の対象となった。このため、番組の冒頭、まず津田氏が「不適切な発言に対して、自分も笑って流してしまった。適切に反応できなかったことに対しても謝罪致します」と、頭を下げた。

それを受けて青木氏は「極めて不適切だったと思っているので、謝罪して撤回をさせていただきます」と、反省の意を表した。その上で「僕なりの一種のケジメとして」「世論とか社会への影響力の強い、地上波のテレビ局、テレビメディアの番組等にはしばらくの間、出演を自粛しようかなと思っています」と、出演辞退を明らかにした。

このユーチューブ番組を見た限りでは、両氏ともまじめに反省している印象を受けたが、問題もある。まず、差別発言があってから、謝罪・発言撤回まで2週間を要していることだ。「劣等民族」とは、社会の一般常識から考えれば不適切であることは明らかである。

これは「世界日報」にも書いたことだが、同じ左翼思想を持つ人間たちだけで交流を続けることで「たこつぼ化」してしまい、自分の発言を客観評価できなかったことが一因だろう。当初は、軽口で言ったのだから大炎上は一時的な現象で、そのうち収まると甘く考え、黙りを決め込んだのだろう。だから、自らその不適切さに気づいて謝罪・撤回したというよりも、なかなか収まらない大炎上によって、たこつぼの外の世界を見せつけられた形となって、このままでは今後のジャーナリスト活動に支障が来すと考えて、反省を表明することにしたというのが実情ではないか。

もう一つ、問題がある。青木氏をコメンテーターとして出演させてきたサンモニの対応だ。同氏の差別発言から、9月だけでも番組は3回放送された。しかし、彼の差別発言については一言も触れていない。

特に9月29日放送は、青木氏が「口先で謝罪とか撤回というと、どこかの政治家みたいと思われるから」と、「一種のケジメとして」テレビへの出演自粛を表明した直後だった。番組中、彼の差別発言に対する番組の見解と出演自粛について、 司会の膳場貴子が説明するのかと思ったが、まったく触れずスルーしてしまった。その4日前には、記者会見で、青木氏の差別発言について問われたTBSの龍宝正峰社長は「われわれが放送する番組以外の発言だから、コメントは控える」として、こちらもスルーしてしてしまった。

では、お笑い芸人・やす子に対するフワちゃんのX(旧ツイッター)での不適切投稿はどうなのか。釈明を聞けば、Xに操作を誤っての〝投稿ミス〟だったというが、本人はやす子に謝罪したと言った。しかし、大炎上は収まらず活動休止に追い込まれた。

TBSはこの問題でも「われわれの番組以外のこと」だからと、スルーしたのか。全ての番組を見ているわけでないので、断言はできないが、フワちゃんの大炎上を取り上げた番組があったはずで、青木氏の大炎上・出演自粛をスルーしたサンモニとの違いはどこにあるのか、その説明を聞きたい。

青木氏の問題について触れずじまいで終わった29日放送のサンモニで、同氏の出演自粛で出演回数が増えているコメンテーターの松原耕二氏が興味深いことを語った。

「自民党は、2009年に、旧民主党に政権を取られた時に、意識して、旧民主党と差別化するために、あえて右に寄った部分があった。その後、安倍さんが長期政権を築いて、右派と呼ばれる議員や党員も増えていって、われわれの住む社会とはちょっと違う部分のある集団になって、それが選択的夫婦別姓が未だにできない理由なんです」

安倍晋三元首相の長期政権の政治スタンスが、TBSのそれと違ったのは確かだ。しかし、長期政権となったのは国民からの支持があったからで、それを「われわれの住む社会とはちょっと違う」言ってのけるのだから、サンモニが国民から乖離していると言っているのに等しい。

松原氏は、選択的夫婦別姓が実現しないのは、あたかも自民党が右傾化したことが要因かのように指摘したが、実際は夫婦同姓の継続を望む国民が多いからだ。内閣府が行った世論調査(2021年12月調査)によると、「同姓を維持したまま、旧姓の通称利用の法制度を設ける」を含めると、同姓維持派は7割に達している。だから、あえて言えば、多くの国民の価値観と違う世界に住むのは、松原氏らのほうなのである。

ここで松原氏が言った「われわれ」とはいったい誰のことなのか。たぶんサンモニのコメンテーターやスタッフのことなのだろう。よく左翼は「われわれは」という言葉を使いたがるが、そこには「われわれこそ正義」というニュアンスが込められており、そうした言葉遣いは独善の悪臭を放つのである。

世の中、保守がいれば革新もいる。右派がいれば左派もいる。それで国家や世界は成り立っているが、今やたこつぼ化した左派は左に寄りすぎて、保守や右派が遠い「別世界」の存在に映り、自分たちと違った考え方に耳を貸す努力を放棄してしまっているのである。
(森田清策)

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