朝日「安倍氏と旧統一教会写真」異論なしだったのか

2024年9月17日 朝日新聞1面
2024年9月17日 朝日新聞1面

「まるでどこかの政党機関紙かと思ったよ」とは知人の感想である。9月17日付の朝日新聞だ。「安倍氏、旧統一教会会長と面談か」と、安倍晋三首相(当時)が自民党本部総裁控室で旧統一教会(世界平和統一家庭連合)幹部と面談した写真と記事を大きく報じていた。

この日、他紙のほとんどが、「トランプ氏再び暗殺未遂」や「『SHOGUN』エミー賞受賞」の記事を1面に持ってきていた中で、「11年前(2013年)の話」をほぼ1面と2面の全部を使って展開していた。この扱いは、朝日新聞が報道機関として強く訴えたい、報じたいと判断をした、ということだ。

紙面づくりは新聞社によって多少の違いはあるものの、朝刊(あるいは夕刊)の紙面をどうするかを会議で決めている。会議と言うほど形式ばったものではないにしても、編集幹部、特に紙面づくりを担当する整理部長が中心となって、政治部、経済部、社会部、外信部など、各部の出稿担当デスクが1面に入る候補記事を持ち寄って、どれをどこに配置するか、写真を付けるか、関連記事を中面に展開するか、などを決める。朝日新聞のやり方は分からないが、いずれにしても新聞社は紙面をどうするかを会議して決めているのだ。

1面トップ候補がない日は各部デスクは記事を出すことを渋り、譲り合い、最後は押し付け合う。だが、強く推す記事を用意している時は、他部が推してくる記事を押し退けてまでトップを取りたがる。ここでは合議が基本だが、社によって、時には「上」の意向で、半ば強引にトップ記事が決められる(決めてある)こともある。

この日の朝日新聞の紙面がどう決まったかは知る由もない。だが、「いま、この時に、この話題をなぜ1面トップと2面全面を使って報じなければならないか」が話し合われたはずだ。そして、会議で合意に達したから、翌日の朝刊ができた、ということになる。さらに、それは「社としての判断」として認識されることになる。

この日の記事は安倍自民党と旧統一教会の「組織的関係」が「ほぼ証明された」というのがその趣旨だ。自民党総裁選が佳境に入ったところで、「関係を断つ」とした自民党に対して、「これはどうなんだ」と突き付けたかったのだろう。

しかし、記事は当時、参院選を前にして「北村経夫候補を応援する」ことを話したというもので、自民党と旧統一教会が「組織として、合意文書を交わして、選挙協力をする」ことを約したとは言い切れない。その場に萩生田光一元経産相(当時総裁特別補佐)、岸信夫元防衛相(前年の衆院選で参院から鞍替え)が同席していたが、党3役もおらず、これだけで「党」を代表しているとは言えない。

朝日新聞の報道に対して、SNSでは「これほどの扱いをする題材か」といった疑問や、「いい加減に統一教会ネタはやめろ」といった批判が見られた。

「報道の自由」があるのだから、何を報じてもいい。だが、その上で疑問があるのは、この記事をここまで大きく扱うことに、朝日社内では「抵抗」がなかったのだろうかということだ。もし誰一人疑問を差し挟まず、別の記事を推すこともなく、その日の紙面会議が「全員一致」だったのだとしたら、相当に意思統一された組織だと感心する。もちろん控えめに言って。

1面のほぼ全部、そして2面は全面を占めている。これだけのスペースを“占有”されれば、他の記事を用意していた部からは文句が出なかったのだろうか。自分の記事が入らないとかの部署利益レベルの話でなく、紙面づくりとして、読者に多様な情報を伝える報道機関として、それでみなが納得したのだろうかと疑問が湧くのだ。

それにしても、どうして写真が朝日の手に渡ったのだろうか。朝日新聞の動画サイト「解説人語」では「朝日新聞デジタル『こちら調査報道班』」に写真が送られてきたと説明している。情報提供があったという話だ。

この写真の存在を知っているのは写っている当事者たちと関係者だが、自民党側から公表するとは考えられない。だとすると旧統一教会側から漏れたものと考えるのが自然だ。それを朝日新聞に提供した、という流れになる。教団側は写真の管理に留意していなかったのだろうか。こちらも一つの疑問だ。

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