イスラエルのハマス掃討は成功しないと指摘する英ニュースサイト

2024年8月30日(金)、ヨルダン川西岸地区トゥルカルムのヌルシャムス難民キャンプで48時間に及ぶ激しい戦闘が行われた(UPI)
2024年8月30日(金)、ヨルダン川西岸地区トゥルカルムのヌルシャムス難民キャンプで48時間に及ぶ激しい戦闘が行われた(UPI)

再建された戦闘部隊

イスラエルがパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスの掃討作戦を開始してからほぼ11カ月、すでに4万人のパレスチナ人が死亡、子供の犠牲者も多く、国際的な非難が強まっている。

イスラエルのハマスの掃討作戦は成功するのか―。パレスチナ人ジャーナリスト、サリー・イブラヒム氏は、英国のアラブニュースサイト「ニューアラブ」で8月27日、「イスラエルはハマスを壊滅するという目標を達成できなかった」と指摘、紛争後もハマスはガザ地区での「影響力を維持する」と主張した。

イスラエルのネタニヤフ首相は2月、ガザの非武装化、イスラエルによるガザ地区の治安管理と文民政府の樹立を目指す意向を示したものの、達成の見通しは依然立っていない。

イブラヒム氏は、「イスラエルは今年初め、ガザ地区のハマスの24個大隊のうち20個を壊滅させたと主張した。しかし、最新のデータによると、ガザ地区北部と中部のハマスの部隊のほぼ半数が再建され、戦闘部隊は再編され、ガザ地区のイスラエル軍に損害を与え続けている」と指摘している。

さらに、イスラエルのシンクタンク「モシェ・ダヤン・センター」パレスチナ研究センターのマイケル・ミルシュタイン所長が7月、「ガザに空白はなく、ハマスは依然として有力な勢力」と指摘したことを挙げながら、ネタニヤフ首相はハマス壊滅という「目標を達成できなかった」と主張した。

住民はハマスを批判

一方で、住民からはハマスに対し厳しい声が上がっている。

独放送局ドイチェ・ウェレ(DW)は、現地のパレスチナ住民の声を拾いながら、「ハマスに対する住民の批判は高まっているようだ」と指摘、ハマスの支配が住民に受け入れられているわけではないことを示唆した。停戦交渉が行われているものの、いっこうに成果は上がらず「住民は、もはや誰を信じてよいのか、何を信じてよいのか分からなくなっている」と現地の絶望的な声を伝えている。

住民の1人はDWのインタビューで、「停戦で戦争を終わらせようともしない組織をどうして支持できるだろうか」とハマスを非難、「個人的には、消えてほしいと思っている。そう思っているのは私だけではない」と訴えた。

ジャーナリストのファティ・サッバー氏はDWに対し、「戦争は予想よりもずっと長く続き、住民はもはや戦争の重荷と、日常的な水と電気の不足、物価高騰、収入の不足の問題など、戦争の壊滅的な結果に耐えられない」とハマスへの怒りが住民の間で高まっていることを指摘した。

ハマスは2007年にガザ地区をパレスチナ自治政府から武力で奪い、実効支配を続けてきた。その後、イスラエル領に対するロケット弾攻撃を続け、イスラエル軍との地上戦も行われてきた。その間も住民の生活は向上したとはいえず、今回の紛争の直接の原因が、ハマス主導で行われた昨年10月のイスラエル急襲であったことを考えれば、地区内でハマスへの反発もうなずける。

世論調査結果を改竄

また、ハマスによる世論操作の疑いも持ち上がっている。

イスラエルの保守系紙エルサレム・ポストは8月29日、シンクタンク「パレスチナ政策調査研究センター」(PSR)の世論調査が改竄されていたことを伝えた。イスラエル軍がハマス治安部隊の拠点から回収した文書から明らかになったものとされ、2024年3月の調査結果が改竄(かいざん)され、住民への印象操作が行われていたことが明らかになったという。

それによると、調査結果の改竄は主に、ハマスの最高指導者ヤヒヤ・シンワル氏の印象を良くし、昨年10月のイスラエル急襲など、ハマスによるテロが支持されているかのように見せるために行われていたという。

停戦・終戦のめどは立たず、200万人を超える住民の未来は依然、見えてこない。

(本田隆文)

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